第2章 4月
それもないかなぁ…と返すアリスに違和感を感じる。
火神は全くわかってはいない様だが、明らかにこの話題になってからどこか落ち着きがない。
『そーだね、お手伝いぐらいならいいかもね。』
アリスはそう言うと誤魔化す様に笑う。
彼女の微妙な変化に気づいていたのは黒子だけだった。
桜の花弁が完全に散り葉桜となってしまった。
アリスは『お手伝いぐらいならいいかもね』なんて言ってしまった事に後悔している。
その言葉はすぐに監督兼マネージャーの相田リコにも聞こえてしまい、どうしても人手が欲しい時だけでいいから来て欲しい、と頼まれてしまった。
『…なんで言っちゃったんだろう。』
ドリンクボトルを手に体育館へ向かう。
日曜日なのに何でこんな事してるんだろう、と思いながらも嫌だと言う気持ちが全てでは無いから自分でもこの矛盾に困ってしまう。
バスケが好きだ。だからこうして近くにそれがある事は楽しい。
けれど、自分はもうプレイヤーにはなれない。
火神と黒子は先輩達と一緒にアップしているし、練習試合の相手校の方々も。
「アリスちゃん!」
「ねぇ私達も見学したいんだけど。」
クラスメイトの女子に声を掛けられ足を止めたアリスは、体育館内へ目を向けた。
練習試合だと言うのにギャラリーがやたら多い。
『そんなに凄い学校なの?』
「違うよ!涼太君がいるの!」
『リョウタクン?』
誰?と首を傾げたアリスにファッション雑誌を開いて見せてきた。
そこには現役高校生モデル、黄瀬涼太の文字。
確かに女子受けするイケメンがこちらを向いていた。
「この人がね、いるのよ!」
相手チームに芸能人がいるからだけでこのギャラリーになるのだろうか。
邪魔にならない所を通って二階に上がるように伝えたアリスは、選手達に指示出しをしている相田の元へと向かった。
「今日はありがとう!助かるわ。」
『手伝いならと言ってしまったので。』
「アリスちゃんも聞いたことあるでしょ?キセキの世代。」
さぁ、さっぱり…とキョトン顔。
あれ?と言った相田の方が困ったような顔をした。
『なんか凄いプレイヤーがいる、みたいな事ですか?』