第12章 7月 II
それに彼等が頼みに来るより前、たぶん合宿場所や日程が決まった時にカントクからもアリスに「手伝い」のお願いが来ていたのだ。
『二人は私が行ったら嬉しい?』
「そりゃそうに決まってるだろ!」
「勿論です。」
二人の答えに2号も同意するかのようにワン!と一声。
『じゃあ行こうかな、海。』
マジか?!と二人と一匹の目が彼女を見る。
濡れた手を拭いたアリスは、スマホに手を伸ばす。
『こんばんは、アリスです。この前のお話ですが、はい…はい、リコ先輩のお手伝いになるなら、はい。』
どうやら電話の相手はカントクらしい。
広げたはいいが、まったくペンの進まないテキスト。
アリスの電話が終わるまで、じっとその様子を伺ってしまう。
『はい、分かりました。じゃあ、よろしくお願いします。』
こうなったら水着も用意しなきゃね、とアリスは言った。
火神と黒子は揃ってガッツポーズをしていた。
そして合宿当時。
火神、黒子と一緒に集合場所に来たアリスを見て、全員が大歓迎の表情を浮かべた。
「…にしても勿体ないよな、彼女。」
「詳しくは知らないが、故障で選手引退したらしいしな。」
みんなに囲まれてワイワイしているアリスを見て、木吉と日向は話していた。
マネージャーではなくとも、手伝いをしてくれる事はありがたいし、実際、物凄く助かっている。
けれど彼女だって、本当はバスケがしたいはずだ。
「さぁみんな!気合い入れて行くわよー!」
カントクの声に全員が大きな返事をした。
夏休み合宿の内容は、午前中は砂浜で素足で行う練習と午後の体育館練習。
持ってきた水着をアリスも着て、一緒に砂浜にいた。
初めて見る海に大はしゃぎの2号と普通に楽しんでいる。
最初こそそんな彼女の姿に目を取られるばかりだったが、カントクの厳しい指導と砂浜という慣れない場所での練習に、みんなバテバテになった。
『飲み物、置いておきます。』
いつの間に用意してくれたのか、スポーツドリンクが入ったクーラーボックスをアリスが運んできていた。
普段の何倍も早いペースでそれは飲み干されていくが、補充のペースがいいのか足りなくなる事はなかった。
午後はアリスは練習から離れて買い出しに行く。