第12章 7月 II
夏休みに入り、どこの部活にも入っていないアリスは家でのんびりと過ごす、はずだった。
「お願いします!俺達の命がかかってるんだ!」
『………。』
青白い顔でげっそりとした誠凛男子バスケ部員一年全員が揃って頭を下げた。
これは所謂、土下座というやつじゃないだろうか、と2号を抱いたアリスは正直ひいていた。
この日、2号を預けに一年生全員でアリスの家を訪ねたのは夏休み中の合宿に同行して「手伝い」をして欲しいと頼むためだった。
「頼むよ、如月。カントクの作る飯を食ってハードな合宿なんて耐えられないんだ!」
今までに何度か「手伝い」をしているうちにみんなともそれなりに仲良くはなった。
ハチミツレモンを作って差し入れした事もある。
しかし、合宿に同行するというのはすぐには返事が出来ない。
「頼む!カントクには監督としてだけ頑張って貰いたいんだ!」
『いつからなの?』
「来週!どうかな?予定とか…。」
残念な事に父親の帰国が延期になった事以外、特別な予定も用事もない。断る事を納得して貰える理由がなかった。
『明日までに決めるよ、急だし。それでいいかな?』
五人は大きく頷いた。
いい返事を期待してる、と来た時よりはいい表情で帰っていく三人。
「別に断ってもいいんだからな。」
「無理はしないで下さいね。」
今日は火神、黒子はアリスの家に泊まる予定になっていたのだ。
これも夏休みをみっちり練習に使う為に、宿題をまとめて終わらせる為のプチ合宿。
アリスは地道に日本語の、特に漢字の勉強をしたおかげで、もうテストの点数を心配する必要はない。
しかし、火神はそうはいかず相変わらずギリギリのラインを綱渡りしている状態だ。
『予定は無いし、暇なのは確かなの。だから断る理由がないんだよね。』
二人を家に招き入れたアリスは苦笑い。
そろそろ帰宅してくるだろうと作っていたサラダ素麺の盛り付けをしながら、どうしたもんかなぁ、と呟いた。
本音を言えばアリスに一緒に来て欲しい。
けれど、火神は彼女がどれだけバスケが好きで、けれどそれで苦しんでいたかを目の当たりにしてしまっている。
彼女が夕飯の支度を済ませるまでの間、少しでも宿題を終わらせてしまおうとテキストを出す。