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君と僕とが主人公LS

第11章 7月


『そ、今の黒子君と同じだね。』


たった一言。
それだけの事が重く胸の中に居座っていた物を溶かして流した。


「アリスさんはズルいです。」

『え?』

「でも、助かりました。」


特別な事は何もしていないつもりだったが、明らかに黒子の表情は変わっていた。
二週間の絶対安静を医者から言われた火神は、バスケ部に顔すら出していない。
もう数日で夏休みだと言うのに。


『タイガ!いつまでウチにいる気?』


自宅に帰るとみんなに見つかり連れ出されるかもしれないから、とアリスの家に逃げ込むように泊まりに来ていた。
彼女の父親が使う予定の部屋、ベッドは今は完全に火神の物になっている。


「いーじゃねぇかよ。おじさん、帰国延期になっちまったんだろ?」


プロジェクトの進行具合が良くないらしく、帰国予定が大きくズレてしまったと連絡が来たのはつい先日。
だから火神の父親もまだ、帰れないらしい。


『そうだけど。だからってタイガがここでゴロゴロしていい理由にはならないでしょ!』

「暇なんだよ!バスケは出来ねぇし。」


はぁ、と大きな溜息をつく。


『タイガ、私は羨ましい。タイガはあと何日かしたらまたバスケが出来るんだから。』

「なんだよ、お前だって。」

『私は無理なの!!』


大きな声と一緒大粒の涙が落ちた。
それに気が付いた火神は慌てて体を起こす。


『…出来るよ、きっと。リハビリもちゃんとしたし最近は違和感もあまりないから、でも…もう、あの頃みたいには出来ないんだよ…。それに、もう、嫌なの…。』


自分の好きなバスケで自分の好きな人が壊れてしまうのは、とアリスは本格的に泣き出してしまった。
どうやらアリスがバスケをやめた理由は手の怪我だけが原因ではないらしい。
離れていた僅か一年の間に何があったというのだろうか。


「…泣くなよ。」

『泣いてないっ!』


泣いてるじゃねぇか、と気まずそうに頭をかいた火神はそっとアリスを抱きしめる。
日本に帰ってからはあまりやる事のなかった親愛のハグ。
向こうにいた頃はそれが当たり前だったのだが、今は何故か違う。
自分の胸で泣く小さなアリスは、あの頃とは違うと改めて感じさせる。


「なぁ、アリス。お前、何があったんだよ。」
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