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君と僕とが主人公LS

第9章 6月 Ⅳ


『青峰君ってあの人で間違いない、よね?』


会場をどよめかせるスーパープレイ。
アリスには慣れ親しんだストバスの自由なスタイルによく似ていた。


「桐皇の五番っスよ。」


後半開始早々から青峰にどんどん追加点を入れられて、ついに点差は二十点まで開いてしまった。
黒子が再投入されたが、その点差は一向に縮まらず火神、黒子の連携攻撃も青峰には全く通用しない。
おまけに火神は試合途中で負傷交代。
いよいよ手も足も出ない状態になってしまった。
それでも試合終了まで諦めず誠凛は戦った。
試合終了のブザーが鳴り、結果はダブルスコアの大敗。


「…大丈夫っスか?」


流石にこの結果は、と黄瀬は心配そうにアリスの顔を見た。


『何が?』

「だってダブルスコアで負けたんスよ。」


真意が見えない。
悲しんではいない、勿論喜んでもいない。
どこか他人事といった感じ。
緑間はそそくさと帰ってしまい、なんとも気まずい空気だ。


『緑間君の言う通りだと思う。黒子君大丈夫かな…。』


成長する為には負ける経験も必要だが、今はそのタイミングじゃなかったよねとアリスは言った。
試合終了後は誠凛に合流する予定もなく、だからと言って学校に戻る気もない。
だから黄瀬に誘われるまま、アリスは会場を出ようと歩く。


「あれ、青峰っち?」


帰路につくギャラリー達の波をすり抜ける様に足早に歩く青峰を黄瀬が見つけた。
これはチャンスだとアリスはその後を追いかけて行く。


『黄瀬君、ゴメン。お茶はまた今度ね!』


大きな声でそう叫んだアリスは大きな背中を見失わないように必死にはしって行ってしまった。
人気の少ない方へと向かっているらしく、もう必死にならなくても見失う事はないだろうとアリスはペースを落とした。
声を掛けるきっかけにと持って来ていたTシャツの入った袋をカバンから出す。


『お疲れ様。』

「あー?」


完全に建物の裏側。
さっきまでギャラリーを沸かせていた選手なのに、勝ったチームのエースなのに、だらしなく座り込んだ青峰は不機嫌そうだ。
声をかけられ、鬱陶しいと睨み返した青峰に『こんにちは』とアリスは微笑んだ。


「アンタ、誠凛だったのか。」

『うん。』

「で、文句でもいいに来たのか?」
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