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君と僕とが主人公LS

第67章 新9月 Ⅰ


「アリスちゃん、今日はもう上がっていいわ。」

『でも…。』

「調子が悪い時は無理しない!休む事も必要よ!」


まだ練習は終わらないが、アリスの様子がおかしいことを理由に、監督は彼女を帰宅させようとする。
最初はやれます、と食いついていたが、監督の「命令だ!」の一言でしゅんと俯いてアリスは帰り支度を始める。
落ち込むアリスを心配して、ずっと2号が彼女の足元から離れない。
静かに支度を済ませたアリスは、みんなに小さく会釈をすると体育館を後にする。
まだ練習の終わらない体育館をチラチラと振り返りながらも、2号は彼女の後を追って行った。
あのまま帰して大丈夫だったのか?と先輩後輩みんながその後ろ姿を見つめる。


「こういう時は、女性に頼りましょう。」


おい、私も女子だぞ!と監督につっこまれながら、黒子は桃井に連絡をする。
きっと女子同士、アリスも言いにくい事も吐露できるかもしれない。
すぐに「任せて!」と桃井からの返信が届く。
きっと桃井なら、アリスがあんな風になっている理由も、そしていつもの彼女に戻るアドバイスもしてくれるだろう。
今は桃井を信じて待つしかない。


「…さぁ、気持ち切り替えて!」


監督の言葉に、よし!とみんな練習を再開した。
しかし、その日の練習は火神の不調が治る事はなかった。
黒子からの連絡を受けて、先回り。
アリスが寄り道をしていなければ、そろそろ着く電車に乗っているはず。
駅前で待ち伏せをして、偶然を装って声をかける作戦。
一緒に行くと言って聞かなかった青峰を突き放し、桃井は一人でアリスを待っていた。


「アリスちゃん!」

『さつきちゃん?!』


思惑通り、トボトボと駅を出て来たアリスを見つけかけよる。


「今帰り?」

『うん。さつきちゃんも?』

「うん!一緒に帰ろう!」


アリスの腕に飛び付き、満面の笑み。
それがなんだか嬉しくて、アリスは頷く。
せっかくだから、お茶しようよ、と桃井はお気に入りのカフェに彼女を誘った。


「…それで、何かあったの?」


たわいもない日常の会話を一通り楽しんだ後、桃井は言った。

『え?』

「…アリスちゃん、無理して笑ってる。私の前でまで無理する必要なんかないのに。」
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