第66章 新8月 Ⅶ
「お前とがいいんだよ。」
じゃあ行くか、と二人は最寄り駅へと向かった。
夏休み中だったが、平日だった事もあり来園客はさほど多くはなく、人気のアトラクションも1時間程度の待ち時間だった。
絶叫系から世界観を楽しむもの、全くバスケから離れて過ごす事だけでも二人にとっては特別な時間だったが、この雰囲気が更にそれを強くする。
『あ、あれ!あれ!』
可愛らしいマスコットキャラクターの耳をモチーフにしたカチューシャを見つけたアリスは、子供の様に売り場に駆け寄り、自分の頭にそれを付けはしゃいでいた。
「お前、元気だな。」
『だってすっごく楽しいんだもん!』
青峰君はこれ、とキャラクターグッズを押しつけられたが、耳付きは受け入れられず、これで勘弁してくれとキャラクターの書かれたキャップをかぶる。
側から見たら仲睦まじい高校生カップルだろう。
実際、自分達と同年代のカップルも多い。
「また連れてきてやるよ。」
『今度はみんなで来ようよ!』
「……。」
あからさま嫌そうな顔をする青峰に、アリスは大笑い。
会計を済ませ値札を切って貰い、満足そうに耳付きカチューシャをつけたアリス。
パンフレットを広げて、次はどのエリアに行こうかと話していると、ググゥと腹の虫が鳴く。
「飯、だな。」
『そうだね!』
どちらの腹の虫が鳴いたのか。
一番近いファストフードの売り場を探す。
「なんだ?」
『ミッチューがいるのかな?!』
人だかりが出来ているのを見つけると、アリスは見てくる!と走り出してしまう。
「ちょ、おい!」
ったく、と幸せそうにぼやいた青峰はその後を追う。
どうやら食事はもう少し先になりそうだ。
ひとだかりの最後尾でぴょんぴょん飛び跳ね、注目を集めているそれを見ようとしていると、「抱き上げてやろうか?」と意地悪そうに青峰は笑った。
『んもぉ!ミッチュー見えた?』
「いや、いねぇな。」
抱き上げなくていいから!とむくれるアリスは、ひとだかりの正体がなんなのかを知りたい、とめげずに飛び跳ねる。
「?!アリス、飯、行くぞ!」
急に表情を変えた青峰は、強引にアリスの腕を掴む。