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君と僕とが主人公LS

第63章 新 8月 Ⅳ


彼女の手から放たれたボールは、緑間のそれには及ばないがボードの的確な位置に当たりネットをくぐり落ちた。


「…悪くないのだよ。」

『そりゃね、フリースローは入れられるよ。』


ディフェンダーもいない状況で、ましては今は試合中でもない。
何のプレッシャーもないこの状況で外す程下手じゃないよ、とアリスは苦笑い。
しかし、緑間が言ったのはその事ではなかった。
彼女が基礎練習の反復をしていた事は昨日のプレイからもわかってはいた。
シュートフォームもとても綺麗で、非の打ち所がない。


「如月、試合中は何を考えてプレイしている?」

『え?何って…。』


すぐに答えられず、アリスは真剣に考え込んでしまう。
そんな事、今までまともに思い返す事などなかった。
つい昨日、黄瀬と対峙した時のことを思い出してみても、その時自分が何を考えていたのか、イマイチ思い出せない。


「覚えていないのか?」

『うーん、覚えてないって言うか。』


例えば、次にどんなフェイントをかけて攻めようか、誰にパスを出そうか、もしくはパスの選択肢を捨て自分でもう少し攻め入るか、その時その時で沢山のことをほぼ無意識に近い状態で考えている。
一概にこれを考えてる、と言い切れない。


「今度、俺と組んでやって欲しいのだよ。」

『緑間君と?』


確かに確実にシュートを入れるだろう緑間と彼女が組んだら、単純に考えたら無限得点プレイになるかもしれない。
けれど彼女は全く逆の事を考えていた。


『遊びでなら楽しいかもしれないけど、試合では通用しないよ?』

「わかっているじゃないか。それが如月が試合中に考えている事なのだよ。」

『あー!』


そうか!とアリスはパァっと表情を明るくした。


「黒子と如月はそっくりなのだよ。」

『そうかも。だってさ、バスケはチームプレイあってこそでしょ。』


1人だけ頑張っても勝てるわけじゃないから、とアリスは言った。
いつの間にか自分達が忘れてしまっていた大事な事を思い出させてくれたのは黒子だった。


「…だから如月は如月のまま、シュートを打つときもそのままやればいいのだよ。」


緑間の言葉に、彼女はハッとした。
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