• テキストサイズ

君と僕とが主人公LS

第61章 新 8月II


体育館に隣接する多目的ホールの使用許可を貰った、とリコが戻ってきた事をきっかけに、その日の練習はここまでとなった。
普段の部活後同様に、片付けをしてしっかりフロアにモップ掛けをした面々は各々の荷物を手に移動する。
最後に中を見回っていたアリスは、昨日、ナッシュが口にした非道な言葉を思い出す。
「There are no right to play basketball in an ape.」(サルにバスケをやる権利はねぇよ)、それは彼と出会った頃に自分が言われていた言葉だった。
しかし、当時の彼はそう言われているアリスを庇ってくれた。


『…The person I loved died.』(私の愛した人はいない)

「Was he loved?」(愛していたのか?)

『タイガ?』


遅いから迎えに来た、とぶっきら棒に言った火神に、聞こえちゃった?とアリスは気まずそうに笑った。


「まだ好きなのかよ、あんな奴のこと。」

『そうじゃないよ。』

「でも今!」

『The memory is beautiful.それだけ。』(思い出は美しい)


そう言うと早く行こう!とアリスは体育館を出て行こうとする。


「俺は!」


火神の悲痛な叫びの様な声に驚き、アリスは足を止めゆっくりと振り向いた。
そこには何か思いつめた様な顔の火神がいた。


「俺はこの試合を最後に日本を出る!」

『…そっか。決めたんだね。』


驚かれるかと思っていた火神は、まるで自分がそう言うとわかっていたかの様な彼女の言葉に、逆に驚いてしまう。


「…知ってたのか?」

『アレックスから聞いてた。』

「なら!お前もっ…」

『タイガ!私は行かない。私は日本でやりたい事があるの。』


まるで火神が何を言うのかわかっていたかの様に、彼の言葉が出る前にアリスは遮ってまでそう言った。
そして、ゆっくりと火神に近付きその胸の中に身を寄せる。


『タイガなら大丈夫、私は一緒には行けないけど、いつも心は繋がってるしタイガを応援してるよ。』

「…アリス。」

『だって私達は家族だもん!』

「っ、そうだな。」


ギュッとアリスを抱き締め返したのは、そうしないと泣きそうな顔を彼女に見られてしまうからだ。
/ 439ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp