第61章 新 8月II
ギリギリのシーソーゲームの末に、ブザービーターで負けた時の様な気分だ。
しかし、心のどこかではわかっていた様な気もする。
共に過ごした時間が長過ぎて、互いを想う気持ちが大きくなり過ぎた。
所謂失恋だが、不思議とあまりショックではないのがその証拠だ。
しかし、目頭が熱くなるのはその大きな想いの中に彼女を恋しく想う気持ちがあったからだろう。
「っぅし!そろそろ行くか!」
『みんなを待たせちゃうからね。』
そっと腕の力を抜いて、笑顔で見つめ合う。
親子とも違う、兄妹とも違う、恋人でもない、けれど友人では軽すぎるこの幼馴染と言う関係は、きっと本人達にしかわからないものなのだろう。
「なぁアリス。」
『なに?』
「さっきの話、みんなにはまだ内緒にしといてくれ。ちゃんと俺から話したいから。」
『うん、そうだね。その方が良い。』
それに今は、一週間後のリベンジマッチに勝つ事を考えなきゃね!とアリスは言った。
「日本を発つ前にケリつけなきゃな!」
『私の分も頑張ってよ!』
あぁ!と火神はやる気に満ちた顔で答えた。