• テキストサイズ

君と僕とが主人公LS

第58章 新 7月


「パパはね、ママが死んでしまってとても悲しかったんだ。だから続けていたら嫌でもママを思い出してしまうからバスケを辞めたんだ。」

『じゃあ、私が今バスケをやってるのも?』

「あーいやいや!それは違うよ。」


君が今とても幸せなのはバスケがあったから、だろ?と克哉は優しくアリスの頭を撫でる。
また子供扱いして、とむず痒そうに笑った彼女は、その大きな手に甘える様にそっと自分の手を重ねた。


『私ね、パパがNBA選手だったって知らなかったの。』

「隠してたわけじゃないぞ。」


それは彼の荷物を片付けていてわかった。
そこに置かれている事が当たり前だったから特別気にする事もなかった、それだけの事だ。
無造作に置かれていたトロフィーもメダルも、刻まれた文字を見ればそれ等は父の名前と所属チームの名前が彫られているものばかりだった。
ちゃんと見ていればわかっていた事だった。だからそれを隠されていたとは思ってはいなかった。


『パパ、やっぱり私はパパの娘ね。』

「あぁ、そうだな。」


大好きなものを失って、大好きなものから離れようとしたのに結局離れられない。
あと何回、このベッドを使う事になるだろうか。
日本に持ち帰る荷物を明日、運送業者が引き取りに来る。
予定していた日数よりも早く日本に帰る事が出来そうだ。


「だいぶ荷物も片付いたから、明日は好きに過ごしたらどうだい?」

『そうだね、木吉先輩のお見舞いに行って来るよ。』

「そうだね、行っておいで。」


さぁ、そう決まったらランチにしようと克哉は腰を上げた。
リビングに降りて行くと、火神の父親がキッチンに立って料理をしていた。
ふわりと香るトマトとチキンのいい匂いに、アリスの腹の虫が騒ぎ出す。
久しぶりの彼の手料理だ、と定位置だった椅子に座った。


『おじさまのパスタ、久しぶり!』

「そうだろ?腹一杯食べろよ?」


大きなお皿にどっさりと盛り付けられたトマトソースのパスタとボールいっぱいのグリーンサラダ。
それに日本のそれとはちょっと味の違うオレンジジュース。
懐かしいランチで腹を満たして、午後は荷物が無くなりガランとした部屋の掃除をする事にした。
夕食は近所のレストランへ出掛け、何年かぶりにこっちの同級生に偶然会ったりと賑やかに過ごした。
/ 439ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp