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君と僕とが主人公LS

第58章 新 7月


『大丈夫、心配しないでよ。』


もう私の帰る場所はここってわかってるから、と火神の大きな背中をあやす様に優しくトントンと叩いた。
ジメジメしていた雨も上がり、今朝の天気予報で梅雨明け宣言が出された。
爽やかに晴れた青空と、ジリジリと照りつけて来る太陽。
誠凜高校は今日で一学期が終了した。
明日の昼過ぎの飛行機で父親の待つロサンゼルスに経つ事になっているアリスだが、ギリギリまで誠凜バスケ部のマネージャーとして、自分に出来る限りのサポートをすると言った。
体育館からは練習の激しさを感じさせるスキール音が響く。


『2号、しばらく会えないけど私のこと忘れないでね。』


ワンワン、と尻尾を振りながら返事をした2号の頭を優しく撫でる。
もっと撫でて欲しいと自分からアリスの手に体を摺り寄せる2号は、きっと彼女の言葉を理解していたのだろう。
いつも以上に彼女に甘える2号に、柔らかく優しい目を向けていた。
翌日、トランクを持って家を出たアリスは古巣のロサンゼルスへと旅立った。


「えー?!アリスっち居ないんスか?!」


黄瀬君声が大きいです、とバニラシェイクをちゅーっと吸い上げた黒子は言った。
練習後に立ち寄ったマジバーガーで偶然一緒になった。
もしかしたらここに来たら会えるかもと思っていたンすけど、と退屈そうに言った黄瀬は遭遇できたのが黒子だけでは不満だったらしい。
向かい側の席に腰を下ろした黄瀬は、自分のコーラに刺さっているストローを噛んだ。


「よう黄瀬、久しぶりだな!」

「火神っちも元気そーっスね。」


トレーに山盛りのハンバーガーを乗せて来た火神は、黒子の隣に座ると山の天辺になっていた一つを手に取る。
もさもさとまるで吸い込むかの様にバーガーを食べ進める火神を、ジトッとした目で黄瀬は見ていた。
そんなにここにアリスが居なかった事に落ち込んでるのか?と呆れた様に火神は黒子を見た。


「黄瀬君はアリスさんから聞いてると思ってましたが。」

「まぁ、それっぽい話は聞いてたっスよ。けどぉ!今このタイミングだとは思ってなかったっス。」


インターハイ直前のこの大事な時期にチームから絶大な信頼を寄せられているマネージャーが不在になるなんて、普通では考えられない事だ。
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