第57章 新 6月 Ⅲ
クラスメイト達がはしゃいだ理由はこれだったのか、と瞬時に理解した降旗は火神と黒子の心情を心配していた。
これを手にわざわざ来たと言う事は、彼女と特別親しい二人も知らなかったのだろう。
それに彼女だけではなく、黄瀬とも二人は親しいはずだ。
黒子の手から奪う様に月バスを我が手にしたアリスは、内容を取り零さない様に必死に小さな文字を追う。
その表情は真剣そのもので、彼女自身も知らなかった事をそこから必死に得ようとしている事が伝わってくる。
写真は紛れもなくアリスの後姿だ。
しかし、アリスと黄瀬の性格を考えると手を繋いでいるという事は他の人が思う様なものとは違うのかもしれない。
『…NBAプレイヤーの血を引く彼女とはインターハイではライバル同士となる…って、どういうこと?』
「「「はぁ?」」」
てっきり黄瀬とのスキャンダルに困惑していると思っていた三人は、目をまん丸くした。
『だってこれ!ほら!!』
写真は自分だけれど、これではまるで自分の父親がNBA選手って事になってしまう、とアリスは言ったのだ。
「あのさ、まさかアリスちゃん知らないの?」
『何が?ってか何を?』
「マジかよ。如月リーンハルト克哉って日本人初のNBA選手だよ?」
お父さんだろ?と降旗に言われ、確かにその名前は父親の名前だが、言われた内容と自分の認識がまだ繋がらない。
「…なんだか違う事に戸惑っているみたいですね。」
苦笑いを浮かべた黒子は言った。
彼女も自分達と同じ様に彼女が黄瀬の恋人だというかの様に書かれている記事を読み、戸惑っているのかと思っていたが、違ったらしい。
『タイガ、知ってたの?』
「まぁ、知ってたけど。」
嘘?!と本気で驚いているアリスに、自分の父親の仕事も知らなかったのかよ、と火神は呆れて溜息をついた。
『でも!パパはタイガのパパと一緒に仕事してるんだよね?』
現役引退後の仕事先が一緒なだけで、そもそもアリスがアメリカに行った理由は、父親が向こうでプロ選手になったからじゃないのかと火神は言った。
『…そうだったかも。なんか今までモヤモヤふわふわしてたものがストンと落ちたわ。』
「驚きです、どこかアリスさんは普通じゃないとは思っていましたが…。」