第55章 新 6月
あまり肉々しい料理は好きじゃない彼女は、その巨大なハンバーグに苦笑いをする。
『これ、私は半分でいいや。』
「僕も半分でいいです。」
なら二人で分けようか、と自分と黒子の間に一皿を置いた。
それを見た火神は、なら俺が二つ食えると喜ぶ。
『サラダも食べなきゃダメだよ?』
「わーってる!」
火神にとっては厳しく辛い勉強の前に楽しい夕飯を三人で食べる。
「三人で食事をするの、久しぶりですね。」
『そう?』
「まぁ、そうだな。」
クラスが変わってしまい、昼食を共にする事も無くなってしまった。
だからこうして三人で食事を共にするのは久しぶりだ。
普段は少食の黒子も今夜はいつもよりも箸が進んでいる。
アリスの作る料理は野菜が中心のヘルシーな物が多く、火神の作る料理は男らしい肉料理が多い。
「お二人と一緒に暮らしたら栄養バランスはバッチリでしょうね。」
「そうだな、また一緒に暮らすか?」
『その時は黒子君も一緒にね。』
そんな事になったら僕は太りますね、と黒子は苦笑いだ。
一緒に暮らさなくても、お前はもっと食べなきゃダメだろ、と火神は笑った。
アリスはそんな二人をニコニコ見ながらミネストローネを口へ運ぶ。
食事が済み、キッチンへ立つのはアリス。
リビングのテーブルでは、黒子が火神に歴史の教科書を広げ覚えるべきポイントを教えていた。
あー、とか、うー、とか妙な声を出しながら必死に教科書にマーカーで線を引いている火神を見て、食器洗をしながらもクスクスと笑っていた。
「火神君、そこ、違います。」
「はぁ?!どこだよ?」
「ここですよ。」
いつだったか、口喧嘩をする自分と火神を見て羨ましいと黒子は言っていたが、今、二人のやり取りを見ていると確かに、そんな気持ちになってくる。
だからはやく食器洗を済ませて、自分もその輪に入りたいとアリスは手を動かした。
最後のお皿を水切りカゴに入れると、トレーにグラスを三つ並べ麦茶を注ぐ。
まだ勉強は始まって30分も経ってはいないが、そろそろ火神は最初の限界が近いだろう。
『休憩する?』
「おぅ、するぜ!」
「まだはやくないですか?」
呆れ顔の黒子の隣で、休憩の言葉に目をキラキラ輝かせていた。
ふふふ、と笑ってテーブルに麦茶の入ったグラスを並べた。