第55章 新 6月
彼女が一番得意とするバスケスタイル。
しかし、あの練習試合の一度きりで青峰には通用しない。
「あめぇよ。」
『あー!もぅ!』
手元からボールを取られ、攻守交代。
必死なアリスに比べるとまだまだ余裕がある様な青峰は、必死に取り返そうと食らいついてくる彼女を至極楽しそうに笑って見ていた。
普段のアリスなら、変態に出会っても逃げる事も抵抗する事も簡単だろうが、青峰と全力勝負をした後で、空腹とあっては一人で帰らせられない。
だから公園でこうしてバスケをした後は、アリスを家まで送って行く。
時間にしたら10分かからない道のりだが、負けて悔しいと言いながらも心底バスケが好きなんだとわかる表情で、その話をする彼女の横顔を見ているのが幸せだった。
手にしたボールを指の上で器用にクルクル回しながらバランスを取っていると、聞いてるのか?と少しむくれた顔をするのも、彼女がその顔を見せる相手が自分だけになってくれればいいのに。
『そういえば、桐皇はテストいつからなの?』
「テスト?」
『実力テスト。』
「ねぇよ、桐皇(ウチ)は二学期制だからな。」
誠凛は月曜から実力テストが始まるから帰ったら勉強しなければいけない、とアリスは溜息を吐いた。
そんなに嫌ならしなけりゃいいだろ、と青峰は笑った。
『私はそんな必死になってやらなくても赤点はないだろうけどさ、タイガがね…。』
はぁっと彼女はまた大きな溜息を吐いた。
『誠凛(ウチ)は、このテスト落としたらインターハイ予選に出られなくなるかもしれないからさ、タイガに勉強教えなきゃいけないの。』
今夜から彼女の家で黒子と火神が泊まり込み、実力テスト対策の勉強合宿が行われる。
帰ったらきっと黒子も来ているだろうから、久しぶりに会って行く?とアリスは言った。
「俺が言うのもおかしいが、お前さホイホイ男を家に入れ過ぎじゃねーか?」
『そうかなぁ?』
「テツだけならともかくよ。火神はどうなんだよ?」
『タイガも大丈夫だよ?』
青峰が何を心配してくれているのか理解していないのだろう。
もし、ちゃんと解って言っているならば、彼女にとって火神は男として見られていないということだ。