第53章 新 5月 Ⅳ
そりゃあ、と黄瀬と黒子は顔を見合わせて笑う。
わかっていないのはアリスと火神。
行こうと歩き出してしまう二人を慌てて追いかける。
「桃っちにも連絡しなきゃっスね。」
「そうですね、桃井さんも心配してましたし。」
まさか、と火神があからさまに嫌そうな顔をする。
それに気が付いた黒子は唇に指を立てて「言わないで下さい」と声には出さずに火神に伝える。
まだ、彼等が何をしにどこへ行く気なのかわかっていないらしいアリスは、不安そうな顔をしていた。
「大丈夫ですよ。だからそんな顔しないで笑っていて下さい。」
歩く速度を落とし、アリスの隣に立った黒子は彼女を安心させる様に微笑んでいた。
煩く鳴るスマホを放り投げたのは数日前。
床に落ちて壊れたのか、充電がきれたのか、GW最終日は静かだった。
両親は外出中、何かと煩い幼馴染は合宿に同行しているからここには来ない。
始まる前までは、他校生で一緒の時間を持てないはずの彼女と、大好きなバスケをらしながら過ごせる楽しいGWになると思っていた。
しかし、実際はこのザマだ。
初めてちゃんと試合として対峙した彼女は、思っていた以上にバスケを楽しませてくれた。
それでもやはり、まだまだ自分は本気を出して挑む程ではなかったが、またバスケを楽しい、と思わせてくれた。
なのに、餓鬼みたいな嫉妬から彼女を傷付けて泣かせてしまった。
ただ、彼女の事が好きで、彼女が笑って自分に挑んでくるのが嬉しくて、それがたまらなく楽しかった。
ずっとこんな風に彼女とバスケして、笑いあっていたいと望んでいたはずなのに。
「なんでこうなっちまうんだよ…。」
アンクルブレイクされた事なんざどうでもいい。
本気でやっていれば、そんな事は起こり得ることだ。
彼女がチームメイト達と親しくしていても、自分以外の男とハイタッチして喜び合っている事だってちょっとした事だ。
自分の見ていられる所でならば。
しかし、彼女は知らないうちに京都で赤司に会っていた。
彼女の事を全部知りたい、自分だけのものにしたいという幼稚な自分のワガママだ。
わかっているのに、それがたまらなく嫌だった。
「そう思っているなら、謝って仲直りして下さい。」
「テツ?!」
いつからいた?と驚いて飛び起きた青峰に、ちょっと前に来ました、と黒子はサラッと言った。
