第53章 新 5月 Ⅳ
火神と黒子が一緒でも問題ないだろう。
しかし、なんだか気まずいと思いながら三人で公園へ向かう。
「終わったんスか?」
お待たせしました、と言った黒子の隣でアリスは恥ずかしそうな、気まずそうな顔をしていた。
「二人と一緒ってことはアリスっちを泣かせたのは緑間っちか、青峰っち…。」
黄瀬の出した名前に思わずアリスはビクっと反応してしまう。
「青峰君となんかあったんですね?」
「あの野郎、アリスに八つ当たりでもしやがったのか?」
黒子、火神に問われまたアリスはジワリと涙を浮かべた。
『違うの、青峰君は悪くないの。』
「なら、何でそんなに泣くんスか?」
ほら、と彼女の肩にかけられたままだったタオルの端を手にした黄瀬は、そっと彼女の涙をそれで拭った。
『…私が青峰君を傷付たの…。』
だから彼は何も悪くない、とアリスは必死に青峰を庇う。
「もしそうだとしたら、何故アリスさんが泣くんですか?」
『…涼太には前にちょっと話したでしょ。私のバスケは人を変えてしまうって。』
大好きだった彼が変わってしまった様に、きっと青峰も変わってしまう。
現にあの日以来、彼は練習に顔を全く出さなくなってしまったし、何度かアリスも彼に連絡したが出てはくれなかった。
拒絶したと思われても仕方がない事をしてしまった自分が悪い。
少しずつ、また昔の様に自分以外の仲間を信じて少しずつだがチームプレイが出来るようになってきていたのに。
そんな青峰を拒絶して傷付けて、またバスケから遠ざける理由を作ってしまった。
「元彼の話っスよね、確か。」
「お前、そんなんいたのかよ?!」
『…うん、中3の時に、ね。』
ポツリ、ポツリとアリスは辛い思い出を話す。
火神が先に帰国してすぐに出会った事、一緒にストバスチームを作りしばらくは楽しくバスケをしていた事。
しかし、強くなり過ぎてしまい、バスケが彼にとっては楽しくなくなり、相手を屈服させる手段になってしまったこと。
その頃、アリスの才能は開花しそんな彼にまたバスケを楽しんでもらえるように勝負を挑み、彼を負かしてしまった。
「まさか、アリスさんに怪我をさせたのは…。」
『…それは事故だったはずなの。』