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君と僕とが主人公LS

第53章 新 5月 Ⅳ


目元をゴシゴシと擦って涙を拭うとアリスは精一杯に笑おうとする。


『…ごめんね、涼太。』

「なぁに謝ってんスか?」


女の子が泣いてたらほっとけないっスよ、と柔らかく笑った黄瀬は、本当はアリスだからほっとけなかったとは言わなかった。
彼女が自分の腕の中から離れてしまい、寂しい様な気がしてそれを誤魔化す為に散らばるビブスを拾いカゴに戻す。


「これ、どこに運ぶんスか?」

『あ!私がやるから。』

「ダメっスよ、アリスっちはまず顔を洗ってこなきゃ。」


そのままじゃ目が真っ赤になっちゃうから、と自分のバッグからタオルを取り出し彼女に渡す。
おそらく、これを運ぶ先には誠凛の仲間がいるはずだ。そんな所に泣き顔で行きたくはないだろう。
黄瀬のその思いを察したのか、アリスは苦笑いを浮かべ『ありがとう』と呟いた。
そして渡されたタオルを手に、小走りに水道へと向かって行った。


「ったく、何やってんスか黒子っち達は。」


彼女の後姿が見えなくなるまでそれを見守っていた黄瀬の表情が険しくなる。
そして洗濯カゴを手に、あんなに彼女が泣いた理由を知るべく黒子達もいるだろうそこへと向かった。


「黄瀬?!」

「久しぶりっスね、火神っち。」


自分達が寝泊まりしていた民宿から荷物を持ち出して合流場所に来ていた火神は、てっきりアリスが運んで来ると思っていたそれを黄瀬が持って来た事に、ダブルで驚く。


「黄瀬君、何してるんですか?」

「それ、こっちのセリフっスよ。アリスっちにあんな事して、二人とも何してるんスか?」


はい、とカゴを押しつける様に火神に渡した黄瀬は彼女が走って行った体育館裏手の水道の方へと視線を向ける。


「あんな事って、なんのことですか?」

「俺の顔見るなり泣き出したんスよ、アリスっち。」


合宿中に黒子っち達と喧嘩でもしたのかと思ったと言った黄瀬の目はいつもの様に笑ってはいない。
泣いたのか?とカゴを下ろした火神は苦い顔をする。
アリスが正式に自分達の仲間になってから、少なくとも自分の知る限りでは彼女が泣く様な事はなかった。
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