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君と僕とが主人公LS

第6章 6月


『黄瀬君ってカッコいいカモ?』


かもって、酷いっス!と拗ねる姿もきっと黄瀬を好きな女子からしたらたまらないのだろう。
野菜や果物を中心に、足りない食材を買って店を出る。もちろん荷物は黄瀬が持っていた。
こういう事をサラッとやってしまう日本人は珍しいな、とアリスは考えていた。


『楽しいの?』


鼻唄でも歌い出しそうな程ニコニコ顔の黄瀬に不思議だとアリスは言った。
ただ買い物をして、更には荷物持ちをしている。
これが誕生日にやりたい事なのだろうか。


「楽しいっスよ。俺の知らないアリスっちのこと、知っていけるのが嬉しいっス。」

『そう?』

「そうなんス!」


本当は空いている方の手を繋いで歩きたいのだけれど、それはまだ先でもいいだろうと黄瀬は思っていた。


「アリスっちはずっとこの街に住んでるんスか?」

『ずっとじゃないよ。』


小三から渡米しており、今年帰国した事を話すと黄瀬は目をキラキラさせた。
また新しいアリスっちの事を知った、と。
ここまでストレートに感情を、しかもあからさまな好感を向けられると流石に恥ずかしくなってくる。
まさに犬が人に懐いて離れないみたいだ。


「なーんか見覚えあるんスよね。この辺。」

『そうなの?』

「ほらあそこのストバスコートとか。」


それはアリスも子供の頃から通っていた遊び場の一つ、そして今でも立ち寄ってしまう場所。


「確か青峰っちの家が近い気がするんスけど。」

『アオミネッチ?』


俺の憧れだった人っスよ、と黄瀬は言った。
とても楽しそうにその人との思い出を話してくれる。
バスケを始めたきっかけで、練習のない日はよく1on1を挑んで負けた、と。
その時に使ったコートにそこが似ている、と。
負けた思い出を笑顔で話すのだから、きっとそれは黄瀬にとってかけがえのない物なのだろう。
ほんの少し、その「アオミネッチ」に興味がわく。
あんな凄いプレイをする黄瀬が憧れだった人はどんなプレイヤーなのだろうか。


『さぁどうぞ。何もないけどゆっくりして。』

「おじゃまします!」


脱いだ靴を振り返りきちんと揃えて置き直すのを見て、アリスはクスクスと笑う。
黒尾は我が家の様に当たり前に上がるから靴も脱いでそのままだ。
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