第6章 6月
火神と黒子は体育館へ、アリスは特に用事もない為帰宅しようかと思っていた。
正門へと近付くにつれて、なんだかいつもとは違うの雰囲気に気が付いた。
放課後のたむろにしては人数が多いし、正門周辺に集まり過ぎている気がした。
まぁ自分には関係ないだろうと通り過ぎてしまおうとしたが、そうはいかなかった。
人を集めてしまっていた原因が、尻尾をブンブン振って飛びついてきたのだ。
「アリスっち〜!」
『黄瀬君?!』
だから何でいつも疑問形なんスか?と彼は笑う。
他校生でモデルで、キセキの世代のプレイヤー。人が集まる理由しかない。
「待ってたんスよ!」
『なんで?』
「今日は俺の誕生日なんス!」
撫でて撫でて、とキラキラの目を向けてくる2号が重なる。
祝って祝って、とはしゃぐ黄瀬は痛い程に視線を集めてしまっている事に気が付いていないのだろうか。
いや、きっとこの程度の事は彼にしたら「いつものこと」なのかもしれない。
『とりあえず、どこか行こうか。』
そう言って足早に去って行くアリスの後を、スキップでもするかのように黄瀬は追いかけて行った。
学校から離れ、駅に向かう。
今日は天気もよく、梅雨の晴れ間と言うやつだ。
どこか行こうと言ったはいいが、行き先が決まらない。
『黄瀬君、どこに行きたい?』
誕生日なんでしょ?と言ったアリスに、まさか本当に祝った貰えるとは思わなかったからそれだけで十分だと言おうと思った。が、言わなかった。嫌だと言われるだろうと思いながら、ワガママを言ったのだ。
「アリスっちの部屋。」
『私の?』
「遊びに行きたいっス!」
アリスは少し考えてから仕方ない、とそれを承諾してくれた。
自分は定期があるが、黄瀬は切符を買わなければならない。
神奈川の学校に行っている彼はすでに誠凛に来ていただけでも交通費を使っただろう。
なんだか無駄なお金を使わせているみたいで申し訳ない気がした。
『ちょっと買い物寄っていい?』
「いいっスよ!」
見慣れない街並みを楽しそうに歩く黄瀬を見るとさっきまでの申し訳なさは消えて行く。
スーパーに入ると、「俺が」とカゴを取られてしまった。
アメリカにいた頃はよくボーイフレンドにこんな風に優しくされていたが、日本人の友達にされたのは初めてだ。