第49章 新 4月 II
ゆっくりと身体を起こしたが目眩もなく、汗をかいてしまっていたパジャマを脱いで着替える。
本当はシャワーを浴びたいところだが、それはまだ我慢した方が良さそうだ。
脱いだパジャマを持ちゆっくりと階段を降りれば、ふんわりどこか懐かしい優しい匂いがした。
洗面所に寄って洗濯物を置いて、顔を洗い髪を整えてからリビングへ向かう。
「アリスっち!起きれたっスね!」
よかったっス!といつもの調子で飛び付こうとした黄瀬を、黒子が止めていた。
火神特性チキンスープに緑間家流タマゴ粥、フレッシュフルーツの盛り合わせ。
リビングのテーブルいっぱいに彼等がアリスの為にと用意した見舞いの品が並ぶ。
寝ている時は暇でしょうから、と黒子は最近読んだ本の中からオススメの物を何冊か持って来てくれていた。
緑間と高尾にも上がってもらい、如月家のリビングが賑やかになる。
いつもは彼女が立っているキッチンには火神が立ち、我が家の様に手際よく食事の用意をしていた。
『…んっ、美味しい…。』
米と卵と塩しか入っていないはずなのに、とアリスはタマゴ粥に驚く。
優しく身体に染み込んでくる様なそれを口に運ぶスプーンが止まらない。
勿論、火神特性のチキンスープも美味しいのだが、緑間の作ってくれたそれは、とても懐かしい感じがした。
「当然なのだよ。」
「緑間君、料理出来たんですね。」
「ってか真ちゃんの指示で作ったの俺だけどね〜。」
独りぼっちで淋しいなんて思っていた事が嘘の様だ。
「あとで肉買って来てやるから、ちゃんと食えよ?」
「体調悪い時に肉って、それで治るの火神っちだけっスよ。」
「はぁ?普通、体調悪ぃ時は肉だろ!」
どこの少年漫画の主人公ですか?と黒子に突っ込まれ火神は不貞腐れてしまう。
『向こう(アメリカ)はそうなんだ、日本みたいにこんな優しいご飯はないから。』
「そうなんですか?」
『そうなの。でも、元気な時でもタイガの言うお肉は遠慮したいかな。』
厚切りステーキを何キロ分も食べてしまう火神の考える肉料理は確かにキツそうだ。
あまり長居してしまったらアリスの体調を更に悪化させてしまう、と緑間と高尾がそろそろ帰ると言った。