第49章 新 4月 II
思えば一人暮らしを始めて体調をここまで大きく崩したのは初めてで、急に心細くなってくる。
置き薬の中には風邪薬はなく、仕方なく解熱作用もある鎮痛剤を出し、出来たばかりのスポーツドリンクで流し込んだ。
熱のせいか味もイマイチわからない。
しかし、冷たいその感触が熱い身体に流れ込むのは心地よかった。
ベッドに戻って横になりたいが、階段を登る体力が戻って来ない。
ソファーに力なく座り、ブランケットに包まった。
自室に置いたままのスマホから着信を知らせるメロディーが聞こえていたが、取りに行く事は諦める。
このままここで一眠りしたら、少しは状態が回復しているだろう、してくれていなければ困る。
そんな事を考えながら、身体が求めるままにアリスは意識を手放し眠ってしまった。
「…病院にでも行ってるんでしょうか。」
インターホンを押しても反応がない。電話にも出ない。
黒子の言葉に皆がそうかも、と思っていた。
「ちょ!火神っち、何してるんスか!」
玄関前にゾロゾロ立っていてもしかたがない、と火神はリビング側へ回り込もうと敷地を囲うフェンスをよじ登っていた。
アリスの暮らすアパートは、一軒家が繋がって建っている様な作りになっており、彼女の部屋はその一番はじにある。
「もしもの時の入り方があんだよ。」
何でそれをお前が知ってるんだ?と突っ込まれ、ブーブー文句を言われ火神は動きを止めた。
「不法侵入なのだよ。」
「だな、逮捕だ逮捕。」
だから!と事情を説明しようと熱くなり声が自然に大きくなってしまう。
しかし、火神の言うもしもの手段は使わずに済みそうだ。
当たり前に黒子が玄関ドアを開けたのだ。
「鍵、開いてました。」
え、と全員が固まる。
そんな事を全く気にする様子もなく、「お邪魔します」と黒子は上り込む。
そんな大胆な彼に呆気にとられてしまっていたが、過去に何度も遊びに来ている火神は遠慮などする様子もなく、慌ててそれを追いかけた。
「…俺達はどうするっスか?」
「テツばっかズリィだろーが。」
そうっスよね、と黄瀬は笑う。
お邪魔しまぁ〜す、と上がり込んで行く黄瀬と青峰。
高尾はどうする?と緑間へと視線を向けた。
取り敢えず玄関にまでは入る事にしたが、そこから上がるつもりは無いらしい。
「ここで待つのだよ。」