第47章 新 3月 Ⅲ
『大丈夫だよ、ホテル内なんだし。』
「そうはいかないだろ。」
それにもう少し君と手を繋いでいたいんだ、と赤司は言った。
そんな風に言われてしまっては、何も言い返せないと恥ずかしそうにアリスは俯く。
それを了解の意だと受け取った赤司は、クスっと笑った。
手を繋いだままエレベーターに乗り込む。
急に会話が途切れてしまい、アリスはチラッと赤司の顔を盗み見る。
「どうかした?」
『ううん、なんでもないの。』
「明日は君が起きたら連絡してくれればいいよ。」
どの辺りに行きたいのか考えておいてね、と赤司はウインクをした。
しっかり克哉にアリスを引き渡した赤司は、スーツのポケットからスマホを出し自分の迎えの車を呼んだ。
「ドレスでデートは楽しかったかい?」
『ノーコメント!』
そう言うとお風呂はいる!と逃げる様にアリスはバスルームへと行ってしまった。
翌朝、一緒にモーニングを食べながらお互いの予定を確認した。
「あまりワガママを言うんじゃないぞ。」
ちょっとだけだから可愛く思えるのが女のワガママだからな、と克哉は冷やかす。
『もう!変な事言わないで。』
彼はお友達だよ、と言ったアリスは小さく溜息を吐いた。
持って来た着替えの中から、お気に入りのブラウスとスカートを出した。
緩く編まれたロングカーディガンを羽織り、ヒールのついたショートブーツを履く。
最近の外出はスニーカーが多かったせいか、ブーツの履き心地に違和感がある。
こんな事で、自分が変わって来ている事に気が付いた。
動くのに邪魔にならない様に結ぶ事しかなかった髪を、今日はお洒落で結ぶ。
『…久しぶりだなぁ、この私。』
大きな鏡のドレッサーの前で、薄く化粧までしてしまった。
克哉は先に部屋を出て仕事に行ってしまった。
アリスは教えて貰ったばかりの赤司の連絡先にメッセージを送った。
風はちょっと強いけれど、空は綺麗に晴れている。京都観光にはぴったりの陽気だ。
「おはよう、よく眠れたかい?」
『うん!』
「じゃあ行こうか。」
最初は嵐山に行きたい、とアリスは言った。
移動は赤司の手配した車、行きたいと言った場所はどこも観光地のはずなのに、たいして待つ事も並ぶ事もなくスムーズに見て歩けている。