第47章 新 3月 Ⅲ
どこへ行っても子供の様にはしゃぐアリスは、それが特別だと気が付かない。
『…Beautiful!』(綺麗!)
渡月橋の真ん中で立ち止まったアリスはそこから見える景色に釘付けになってしまった。
まだ桜の季節には早過ぎたが、それが無くても美しい風景に感激のあまりうっすらと涙を浮かべる。
『日本人、日本人って言われるの大嫌いだったけど。今は日本人でよかったって思うの。』
ありがとう、セイ君と笑ったアリスの頬をツーっと涙が落ちるのを見てしまった。
この涙にはきっと彼女が一人で抱えていた悲しみが含まれているのだろう。
そう思ったら自然に彼女を抱き締めてしまっていた。
昼食は赤司オススメの店で美味しい湯豆腐を食べた。
その後も金閣寺、銀閣寺と見て回ったアリスは、最後に藤森神社に行きたいと言った。
「随分と熱心にお詣りしていたね。」
『そうかな?』
「信心深いんだね。」
『そうじゃないよ、神様にお願いしてたわけじゃないから。』
本当に自分が向き合って勝たなきゃいけないものがなんなのかを考えてたとアリスは言った。
これで行きたかった場所は全部回れたと彼女は改めて赤司に礼を言う。
「じゃあ最後に俺の行きたい所へ行ってもいいかな?」
『うん、行こう!』
赤司が連れて行ったのは何処にでもあるような公園だった。
ここに何があるの?と不思議そうな顔をしたアリスだったが、その疑問はすぐに解けた。
「そのままではやり難いだろう?」
いつの間に用意していたのか、車のトランクを開けさせた赤司はそこからアリスのサイズのバッシュとボールを出した。
もう、とアリスは笑う。
『セイ君って魔法使いみたいね。』
「そんなことはないよ、俺が君とやりたかったから用意させておいたんだ。」
だからこれはある意味賭けだった、と赤司は言った。
二泊三日の京都旅行の殆どを克哉ではなく、赤司と過ごしてしまった。しかも最終的には彼とのバスケに夢中になって、京都観光すらしなかった。
「またいつでも遊びにおいで。」
『セイ君、本当にありがとう!』
東京に来たら必ず連絡してね、とアリスは言う。
空港まで見送りに来てくれた赤司に改めて礼を言って、飛行機に乗り込む。
「…淋しいのか?」