第46章 新 3月 II
着替えている間に、と2号に朝ごはんを出すと自室へと駆け戻った。
この際、着いたら直ぐに動ける様にジャージで行ってしまおう。
Tシャツにパーカー、ジャージ生地のハーフパンツに急いで足を通して靴下を履く。
スポーツバッグにタオルと財布とスマホを投げ込み、電車で飲もうとゼリータイプのエネルギー補給食品を冷蔵庫から出した。
『2号行くよー!』
「ワンワン!」
ご飯を食べ終えた2号が元気に玄関に走って来た。
トントンと爪先でスニーカーの履き心地を直すと外へ飛び出す。
駅まで走るよ、と2号に声をかけながらしっかりドアに鍵をかけた。
ここまで僅か15分。
駅に向かって走る彼女の後を2号が楽しそうに追いかけて行く。
上手く電車が来てくれれば、一時間の遅刻で済みそうだ。
住宅地を抜けた所で2号をバッグに入れると、代わりにスマホを出した。
『すいません、寝坊しました。今、向かっています。』
走りながら電話をかけた相手は相田。
事情はわかったから気をつけてねと優しい言葉が返ってきて、更に申し訳ない気持ちになる。
通話が終わったスマホを改札口にかざし開いたゲートを走り抜ける。
都合よくホームに入ってきた電車に乗り込む、春休み中のせいか席もポツポツと空いており座ることが出来た。はぁ…と取り敢えず安心して息を整える。
スマホをバッグに戻そうとしてメッセージが届いている事に気が付いた。
ゼリー飲料を口に咥えながら、その内容を開いた。
送り主は父親からで、どうやら夜中に届いていたらしい。
『…もう、急なんだから。』
来週末旅行に行くよ、という内容だった。
行き先は書かれていない。しかし二泊分の着替えを用意して、空港に来て欲しいと書いてあった。
その日数なら海外ということはないだろう。
一先ずメッセージを読んだ事を伝えなければ、と『わかった』とだけ返す。
遅刻した日に練習を数日間休む事も伝えなければならないかと思うと、なんとも気まずい。
そうこうしているうちに、誠凛高校最寄駅に着いてしまった。
『2号、また走るからね。』
トントンとカバンの外側から揺れるけど我慢してね、と2号に合図をしたアリスは急いで誠凛体育館へ向かった。
愛娘が寝坊して走っている頃、ロサンゼルスの克哉は彼女からの返信を見ていた。
「日本での総会にアリスちゃん連れて行くのか?」
