第46章 新 3月 II
思い切り眉間に皺を寄せたアリスは、自分の出せる最低音でそう言った。
「っはは!なんだそれは!」
似てませんか?とアリスは笑った。
「なんや仲良うなったなぁ?」
砕けた表情で笑い合っていた二人に声を掛けた今吉は、それだけ打ち解けたなら上手くやれそうやなと喜ぶ。
参加者がつける様に配られた無地のゼッケンシール。
チーム名と自分のニックネームを書いて身体のどこかに貼り付けておくように、との指示だ。
『チーム名って?』
「決まっとるやろ、そんなん。」
ワシらのチームはSmile(スマイル)や、と今吉は言った。
また可愛らしい名前にしたな、と言った諏佐だったが、楽しそうに渡されたゼッケンにそれを書き込んでいるアリスを見て、確かにこの名前でよかったと思っていた。
「どうや、なかなかやるやろ?」
「前にお前と遊んでるのを見たが、別人だな。」
チームSmileの中心は彼女で、外が今吉、内が諏佐。ストリート慣れしているアリスにボールを預けるのが一番だろうと今吉は言った。
初めてチームを組むとは思えない程に息ぴったり。彼女を自由にさせている程、相手はそれに翻弄される。
面白い程に試合はスムーズで、同世代のチームトーナメントに勝ち進み、本イベント総合優勝チーム決定戦にまで進んだ。
『なんかすごい楽しいです!』
「ほんま!最後にこんなに楽しめて悔いなしや。」
『最後って?』
試合の合間の休憩時間。
うっかり零した今吉の言葉に、諏佐は苦い表情を浮かべた。
聞かれた今吉は、彼にしては珍しく返答に困っていた。
「俺達はプロを目指しているわけじゃないからね。」
『でもクラブ活動とかはありますよね?』
彼女の言う通り、大学に行ったってバスケを続ける事は出来る。
しかし今吉も諏佐も続ける事を選択しなかった。
「大学は高校のそれとは仕組みから違うんだよ。」
『そうなんですか。』
きっと二人がしっかり将来を見据えて決めた事なのだろうから、これ以上は外野が何か言う事ではないと察したアリスは、どこか悲しそうな顔をした。
『でもこれが最後ってわけではないでしょう?きっと今吉さんと同じ思いの方もいますよ。』
だから丁度いい仲間とバスケを楽しめればいいんじゃないですか?と一生懸命に笑った。