第45章 新 3月
『あとは、お菓子とアイス買って行こう!』
「おう!」
仲良く買物をする二人は、他の客達には微笑ましい若いカップルに見えていたのだろう。
青春ドラマのワンシーンみたいだったとスーパーを出て行く主婦達はニコニコ話している。
それが聞こえてしまい、黒子はほんの少し寂しさを感じてしまう。
それを瞬時に感じ取った2号が彼に擦り寄った。
「大丈夫ですよ、二人は僕にとっても大事な人達ですから。」
勿論、君もねと優しく2号を撫でる。
「…テツ?」
「こんばんは、青峰君。」
黒子の手の中から尻尾をプリプリと振りながら2号は彼に駆け寄った。
桃井さんは一緒じゃないんですか?とどこから飛び付かれるのかと周囲を警戒する黒子に、いねーよと返した青峰は身を屈めて2号を撫でていた。
そんな優しい顔もするのか、と黒子は驚く。
「つか、何でこんな所にいんだよ。」
お前ん家から遠いだろ?と言った青峰は、あぁ、そう言う事かと自己完結させていた。
自分に懐いて来ているこの犬を連れているのだ、きっとアリスの家に向かう途中か、買物をしている彼女をここで待っていたのだろう。
相変わらず仲が良いんだな誠凛(お前等)は、と言った青峰。
「羨ましいですか?」
「ばっ!別にそんなんじゃねぇよ!」
図星を突かれて動揺する青峰をクスっと笑う黒子。
どうせどう繕っても見透かされてしまうのだから、もういいか、と青峰は溜息をついた。
「羨ましいよ、お前等が。」
「青峰君?」
もし、あの時自分が変わらなかったら、バスケに絶望してしまう事がなかったら、ちゃんと自分と黒子と向き合っていたなら。
過ぎた事を悔やんでも仕方がない事は分かっているが、今の彼等を見てしまうとそう考えてしまう。
黒子と組むのが火神ではなく自分だったら、と。
しかし、だからと言って自分の現状がそこまで悪いわけでもない。
「じゃ、またな。」
ぐしゃぐしゃっと2号を撫でると青峰は背を向けた。
てっきりこのまま買物を済ませて出てくるアリスを待つつもりなんだと思っていた黒子は、そのまますんなり帰って行く後ろ姿に呆気に取られていた。
「おい、少しはお前も持てよ!」
『持ってるじゃん!』
「軽いもんばっかじゃねーか!」
両手にスーパーの袋をぶら下げた火神とアリスが賑やかに出て来た。