第44章 2月 Ⅲ
まるで自分だけが特別にアリスから他とは違うチョコを貰ったみたいで、また勘違いをしてしまいそうだ。
『私じゃ桐皇には入れないし。お願いね。』
「…こんなんはこれっきりにしろよ。」
『うん。青峰君、ありがとう!』
出掛ける用意をしてくると自室に戻ってしまった彼女に残された青峰は、その箱をもう一度そっと開けてみた。
蓋の内側にメッセージカードが付いていることに気が付き、破かない様にそっとそれを取る。
『I'm so glad to have met you (^^)Keep a smile forever.』
(あなたに出会えてよかった(^^)ずっと笑顔でいてね)
「…英語わかんねぇーよ、バァーカ。」
意味は解らないがきっと読めたら嬉しくなる内容が書かれているだろうことは解った。
だからカードだけを制服のポケットに入れた。
きっともうすぐアリスは支度を終えて降りてくる。そしたら自分もここを出なければならない。
『青峰君、そろそろ出掛けるよ?』
「あぁ。」
制服姿に着替えたアリスはリビングにひょっこり顔を出すと、青峰にもそろそろ出掛ける用意をしてくれと言った。
自分にとアリスがくれたチョコは鞄へ、代わりに届ける物は渡された袋のまま。
何故か我が家の様に居心地のいい如月家のリビング、青峰お気に入りのソファー。初めてここに来た時から、決まって青峰が座るのはそこだ。
『青峰君、行くよ。』
どうやらタイムリミットらしい。
仕方ないと思い腰を上げた青峰は荷物を手に玄関へと向かった。
その後をアリスが追う。
「なぁ、アリス。」
『なに?』
「なんで誠凛にしたんだ?」
やっぱり火神がいるからか?と言われたそうじゃないよ、と一言。
本当にそれは偶然だった。だから入学式の後、同じクラスにまでなった事には驚いた。
『あのね、中三の夏に学校見学で一時帰国したの。その時に出来たばかりの高校って誠凛だったんだよ。』
「なんだそれ。」
帰国子女って色々あるの、と言うアリスにふーん、と興味無さそうに返した。
今だって日本特有の文化やコミュニケーション方法に慣れない事が多いと愚痴る。
例えば今日だって、とヴァレンタイについてもアリスは納得できないらしい。