第43章 2月 II
他の乗客の目もあり、車両連結部に隠れて電話をかけた。
「さつきの野郎がアリスと菓子作ったらしいんだ。」
「桃井さんが?」
「アリス、休んでんだろ?」
もしかしたらそれが原因で体調崩してるんじゃないか?と言った青峰は、心配だから今からアリスの家に行くと言った。
「僕も行きます。もしもの時は人手があった方がいいでしょうから。」
駅で落ち合う約束をし、次はアリスへ電話をかける。
しかし、いくら呼び出しても応答はなく、メッセージを送っても既読にならなかった。
既に学生の姿はない時間だから余計に目立つ。
それでなくとも身長の高い青峰と火神が並ぶと余計だ。
「なんでコイツも連れて来たんだよ。」
「お前こそ!なんでいんだよ!」
バチバチと睨み合う青峰と火神を無視して、歩き出す黒子。
その間、アリスに電話をかけていたがやはり応答はない。メッセージを送っても既読にならない。
これはもしかすると、青峰の予感が当たってしまっているのではないかと、珍しく黒子の表情にも焦りの色が浮かんでいた。
「二人とも!置いて行きますよ?」
黒子の声に、火神と青峰は一旦睨み合いをやめる。
今はアリスの無事を確認する方が先だ。焦る気持ちが三人を走らせていた。
そんな騒ぎになっているとも知らず、コーヒーを飲みながらアリスと黄瀬はDVDを見ていた。
それはまだ怪我をする前、中学2年生のアリスが出場した女子バスケの試合。
同じ女子でも彼女より一回り体格のいい選手ばかり。
試合が始まる前の相手チームの選手達は日本人クオーターの小柄なアリスを嘲笑う様な雰囲気もあった。
「これって?」
『この前緑間君に言われたんだ、もう一度見直して見るべきだって。』
でもなんとなく一人で見る気にはならなくて、とアリスは苦笑い。
もし、感じている通り、昔の自分より劣る点を見つけてしまったら落ち込むだろう。
しかし、それはちゃんと向き合わなければならない事実だ。
だからこそ、今の自分のパフォーマンスを見た事のある人と一緒に、客観的に見ての感想も聞きたかった。
「こんなの見ちゃっていいんスか!」
『涼太が嫌でなければ。』