第43章 2月 II
いつもならば既に教室に来ている時間だがアリスの姿はなく、どうしたのだろうと黒子は窓の外へと視線を向けた。
登校してくる生徒達の中に、火神の姿を見つけた。誰かと電話しながら歩いている。
もしかしたらその相手はアリスかもしれないと、教室に彼が顔を出したら聞いてみようと黒子は思っていた。
その頃、教室に着いた青峰は今朝桃井に渡されたチョコマフィンと言う名の毒物をどうしたものかと顔を引きつらせていた。
黒子にも渡すんだ、と自宅で張り切っていた桃井の邪魔をして、今年こそ作らせない事に成功したと思っていたが、どうやらそれは思い込みだったらしい。
「…流石に捨てるわけにもいかねぇしなぁ。」
桃井の料理は半端なく不味い、むしろ人が食べてはいけない何かを作ってしまう事を知っている青峰は、いくら見た目が普通でもそれを食べる気には慣れず困っていた。
「青峰さんも貰ったんですね、それ。」
「まぁな。つかお前、食って平気なのか?」
朝練の後半分食べちゃいました、と笑うチームメイトでクラスメイトの桜井は特に体調を崩している様子もない。その上、美味しかったですよとまで言っている。
しかし、桃井は間違いなく手作りだと言っていた。
「如月さんと一緒に作ったらしいですよ、これ。」
「はぁ?!」
なんで?と聞かれた桜井は、そこまでは聞いてないんです、すいませんと何度も頭を下げる。
もし、桃井が一人で作った何かを彼女が試食していたらと考えると、悪い事しか思い付かない。
こんな時、同じ学校だったら自分で確認できたのにと焦ったさを感じながら、青峰は黒子へと安否確認のメッセージを送った。
「(理由は詳しくわかりませんが、アリスさんはお休みするそうです。)」
「っ!マジかよ!」
「青峰さん?」
まだ朝のHRすら始まっていないのに、カバンを掴んで教室を出て行こうとする後姿を桜井は呼び止めた。
「ワリィ、俺帰るわ!」
適当に理由付けとけ、と言うとそのまま行ってしまう。
バスケ部の練習をサボる事はいつもの事だが、学校をサボるのは初めてのこと。
登校してくる生徒達の波に逆らって走った青峰は、そのまま駅へ、そして自宅へと戻る電車に飛び乗った。
「…あ、テツか?」
「おはようございます、青峰君。」