第43章 2月 II
「今までは義理だとか本命だとか気にしないで、貰える物は貰う様にしてたんスけど。今年は貰いたくないから…。」
ちらっと時計に視線を向けたアリスは、今日は遅刻してしまう事を覚悟した。
事情は馬鹿げた事だが、当人は相当に心身共に疲れ果てている。
「アリスっち、ワガママを言ってもいいっスか?」
『私が聞ける事なら、ね。』
本当にアリスは黄瀬に弱いらしい。
ついたままだったTVはいつの間に番組が変わってしまっていた。
「今日はこのまま、一緒にいて欲しいっス。」
それは自分と一緒に学校をサボって欲しいと言う特大のワガママだ。
黙ってその場を離れたアリスは、そのまま二階の自室へと向かってしまった。
きっとそんなワガママには付き合っていられない、と学校に行く支度をしに行ってしまったのだろうと黄瀬は項垂れた。
「…まぁ、そうなるよな。」
そんな都合のいいワガママが通るわけがない。
好きな子が出来たから、その子以外からは受け取らない、そもそもは自分のワガママが招いたことだ。
ウインターカップへ向けて本格的な練習が始まった事に合わせ、モデルの仕事をかなり減らしていた。
少しはファンの数が減ったかと思っていたが、それは逆効果だったらしい。
一部の過激なファンの影響で、自宅や海常の学生寮、学校にまでチョコを渡して黄瀬の姿を一目見たいと押し掛けられてしまった。
『…うん、そうなの。うん、…だからね。うん。練習には行けると思うからさ。』
戻ってきたアリスは通話を切るとニコっと黄瀬に微笑みかけた。
『タイガに頼んでサボっちゃった。』
「…まじ?」
『マジ。無断欠席はマズイからさ。』
そう言ったアリスは、クスクス笑う。
「…アリスっち。」
思いもよらなかったアリスの対応に、驚きと嬉しさと申し訳なさと、色々な感情が溢れてまた涙ぐむ。
取り敢えずコーヒーでも飲む?とキッチンへ立ったアリスは、お湯を沸かす。
『でも外には行けないし…。』
「…ゴメン。」
『あ!そうだ、あれ、付き合って貰おうかなぁ。私一人では見る勇気がなくて。』
一緒に見て欲しいDVDがあるの、とアリスは言った。