第39章 新年 1月
その隣ではこの人混みすらもどこか楽しいとワクワクした表情を浮かべて屋台を見ている火神がいた。
『お腹空いたんでしょ?』
「あぁ、少しな。」
『綿飴!』
金魚すくいはないのね、とちょっと残念そうに言ったアリスに、それは夏祭りだろ、と青峰が突っ込む。
思えば、去年の夏、花火を見に来たのもこの場所だった。
あれから約半年過ぎたと言うのに、未だに自分達の関係は変わっていない。
むしろ、あの時よりも距離がある様にも感じてしまう。
事実、今もアリスは青峰ではなく、火神と並んで歩いている。
「…大ちゃん、ヤキモチ?」
「あぁ?!」
アリスの持つ綿飴を火神が身を屈めて口にしている。
それはとても仲が良く、何も知らない人から見たら微笑ましい高校生カップルだ。
ヤキモチなんてやいてねぇ!と言ったけれど、そんな光景を見せられては内心穏やかではいられない。
幼馴染らしいが、明らかに距離近い二人を引き離したくなる。
『ちょ!青峰君っ?』
アリスの手を掴み、残っていた綿飴を貪る。
突然背後から捕まえられたアリスは、見る見る小さくなってしまう綿飴を見て悲壮な顔。
「あっめぇ…。」
『あぁ〜、私の綿飴がぁ…。』
元の大きさの半分以下になってしまった薄ピンク色のフワフワを、アリスは泣き出しそうな子供の様な顔で見つめる。
ザマァみろ、と全く悪気ない顔の青峰にアリスを泣かせんな!と怒る火神。
まるで大きな子供が三人いるみたいだ。
「全く、素直じゃないんだから。」
ほらほら、また買えばいいよ、と睨み合う青峰と火神の間からアリスを連れ出して、桃井は楽しそうに笑った。
折角の晴れ着なんだからお父さんにも見せなきゃね!と青峰の母親に促され、振袖のまま自宅へ帰る事にしなったアリスの隣を火神が歩く。
しかし、着物のアリスとは歩幅が違いすぎて気が付くと二人の間に距離が開いてしまう。
「っ、わりぃ。」
『別に謝る事じゃないよ。』
こんな時に感じてしまう。
きっと黒子ならアリスの隣を離れてしまう事なんてない。
普段でも戯れるみたいにアリスの側に居たがる黄瀬も絶対に彼女から離れないだろう。