第39章 新年 1月
もしもーし!と返事の無くなってしまったスマホに向かって声を荒げる。
「へぇ、やっぱ似合うじゃねぇか。」
『え?』
スマホからではなく、直接掛けられた声に顔を上げたアリスはボールをクルクル人差し指の上で回す青峰と、顔を真っ赤にした火神を見つけた。
「初詣、大ちゃんも行く?」
「あんな人が多い所…。」
行かないと言うかと思えば、ふと、何かを思い出したかの様な青峰は付き合ってやるよ、と一言。
『タイガ!ちょっと大丈夫?』
「なんつーか、ヤバイ。」
え?とアリスは心配そうに火神の顔を覗く。
『熱でもあるの?』
「いや、大丈夫だ!」
よかった、と安心して笑ったアリスに火神は思わず視線を反らしてしまう。
「…very beautiful」(スゲー綺麗だ)
『thank you』(ありがとう)
着物姿なのに交わす会話が英語になってしまう。
どうやらまだ、火神は激しく動揺すると英語が先に出てしまうらしい。
アリスはそれに合わせて英語で返事をしただけの事。
しかしそれは、青峰と桃井にとっては少し寂しさを感じさせるものだ。
聞き取れない程はやくも難しくもないが、英語というだけでなんだか二人が違う世界の人の様に感じてしまう。
きっと桃井はそんな寂しさを誤魔化す為に、アリスの手を取り歩き出したのだろう。
『さつきちゃん?』
「人が多いし、はぐれたくないから。それに二人に取られちゃうのもイヤだったの。」
桃井の言った二人が、先を越された、と呆気に取られた顔をしている。ここぞとばかりに桃井は二人に自慢気な笑みを向けた。
「…さつきの野郎。」
悔しかったら取り返してみろとでもいうかの様な桃井は、そのままアリスと手を繋いで神社へと向かった。
参拝の列に並ぶ事数十分、お賽銭を投げてを合わせる時間は数分。
『日本の神って凄いのね。』
「こんなもん、信じる奴はいねーよ。」
『そうなの?』
たった5円でみんなの願いを叶えてたら神は破産だろ?と青峰は笑う。
正月に初詣に行って願うのは、今年はこうなりたい、こうするぞ、と自分自身の目的を再確認しに行く様なものだ。
だからここにいる大半は、神に縋って来ているわけじゃないだろと青峰は言った。