第38章 WC Ⅳ
でも桐皇(ウチ)に勝ったんやから負けて欲しくはないなぁと言った今吉に、そうですね、とアリスは嬉しそうに笑った。
アナウンスが間も無く決勝戦が始まる事を伝え、二人はそれぞれ待つ人のいる場所に戻る。
『今吉さん、また…。』
「ほな、またな。」
次の春には卒業してしまう今吉とはもう『また』はない事はわかっていた。
けれど何故だろう、自分がバスケから離れなければまた会う機会があるような気がして、アリスは『また』と声を掛けていた。
そんな彼女の気持ちを悟ったのだろう、今吉も「また」と返した。
試合開始のブザーが響く。
『Wins! My heroes!』(勝って!私のヒーロー達!)
会場が一気に暑くなると同時、アリスは叫んだ。
「なんだろうな、この違和感。」
第一クォーターが終わり、得点はドロー。
しかし、既に全力勝負の誠凛とは違い洛山はまだどこか余裕がある様に見える。
そして全くと言っていい程に黒子のスタイルが洛山相手には機能していない。
『たぶん、あの黒子君によく似た人。』
「確かに彼のスタイルは似ているね。」
第二クォーターは一方的と言っても過言ではない様な内容だった。
個々の選手の実力差が見せつけられ、チームとしてもその差を思い知らされた。
点差は25点、小柄な赤司に決められたアリウープは誠凛選手達の心を見事にへし折った。
しかし、誠凛は諦めてはいない。
自分達が出来るパフォーマンスの全てを洛山に、赤司にぶつけている。
その成果がジワリジワリと出て、誠凛に試合の流れが向き始めた。
『パパ、わからないの。』
「ん?どうしたんだ?」
こんな時、選手達はなんて言われたいのか今の自分にはわからないとアリスは呟いた。
もうすでに頑張っている彼等に『頑張って』なんて言えない。
「そうだなぁ。言葉は要らないんじゃないかな。」
結果がどうあれ、目を背けずに最後まで同じ目線で見届けてくれる仲間がいる、それで十分だろ、と克哉は言うとそっと肩を抱き寄せた。
ラスト10分、点差は20点。
誠凛の怒涛の反撃は四連続得点、そのまま勢いは止まらず、ゾーン状態の火神が更なる追加点を狙って飛んだ。
『…なに、これ。』
ここは観客席だというのに、恐怖を伴う冷たい雰囲気にアリスは声を震わせた。