第38章 WC Ⅳ
「ねぇ大ちゃん。」
「あぁ?」
「アリスちゃんのお父さんって、あの如月克哉だよね?」
如月リーンハルト克哉。
バスケをやる男子ならばその名を知らない者はいない。
ハーフではあるが、日本国籍の選手として、初めてNBAの舞台でプレイした選手だ。
未だに本場でプロとして活躍している日本国籍の選手は片手で数えられる程度。
あぁ、とあまりそれには興味がないかの様な返事をした青峰の視線の先には親子仲良く観戦している二人がいた。
そしてそんな二人はコートの誠凛、火神と黒子に向けられている。
「…大ちゃん?」
「こんな事、今更どうにもならねぇ事だがよ。もし、俺達が勝ち進んであそこにいるのが俺だったとしてもアイツはあんな風に笑ってくれたんかなって思ってよ。」
きっとそれは、青峰だけではなく、今この場にいたアリスに特別な感情を抱く全員が思っていた事だろう。
そして、やはり自分は彼女にとっての特別にはまだ届かないと何となく気が付いてしまった。
そんな中、秀徳と海常の試合が再開する。
「武内さん、やっぱり彼の将来をとったんだね。」
『ずっとベンチだもんね…。』
黄瀬の欠場で試合は秀徳有利の一方的な流れのまま、けれど海常も諦めてはいない。
結果、96対54で秀徳が勝った。
物凄く悔しがってまた泣いているかもしれないと思ったが、試合直後には緑間と黄瀬が笑顔で話している姿を見る事ができ、アリスはホッとしていた。
決勝戦開始までの僅かな時間、飲み物を買いに行こうと席を離れたアリスは自販機の前で見知った顔を見つけた。
『受験勉強はお休みですか?』
「そうや、またには息抜きも必要やろ?」
ガタンと音を立てて落ちてきたコーヒーを手に取った今吉は、そのままもう一本分のコインを入れる。
商品を選ぶボタンが光った事を見た彼はそっと横に外れ、アリスに好きなのを選べ、と促した。
「この前のサンドイッチの礼や。」
奢ってもらう理由がないと一度は遠慮したが、そう言われたら買って貰ってもいいかも、とアリスはボタンに手を伸ばした。
「誠凛の応援に来てんやろ?」
『はい。今吉さんは、違いますよね?』
「そやなぁ、応援ではないなぁ。」