第37章 WC Ⅲ
一緒にいる氷室に気が付いた彼女は、もう怪我は大丈夫なの?と駆け寄る。
「大丈夫、大丈夫。アリスのお陰で腫れてもいない。」
ほらね、と氷室は前髪を持ち上げて顔全体を見せた。
それを見たアリスはよかった、と安堵の溜息を吐く。
そしてギュル〜っとまた彼女の腹が鳴いた。
「食べる?」
『いいの?』
可愛いから特別、と自分の菓子を紫原は差し出す。
それを見た氷室は驚いていた。
チームメイトにだって絶対に分けたりしない紫原が、自分からアリスにはそうしたのだ。
相当腹を空かせていたのか、遠慮などする様子もなく、アリスはパクパクとポテトチップスを口へと運ぶ。
これはこの二人はちゃんと試合を見る気はないな、と氷室は苦笑いだ。
『…ねぇ、あの人が赤司君、だよね?』
「そーだよ、あれが赤ちん。」
『赤司君って兄弟とかいる?』
どうなんだ?とアリスの質問の答えを紫原に求める様に氷室も視線を向けた。
「いないはずだよ。ムロちんと火神みたいな兄弟は知らないけど。」
そう、と何か引っかかるような濁った返事をするアリスに氷室はどうした?と声をかけた。
『うん、あのね。昔ちょっとだけセイ君とバスケした事があるんだけど。』
それが今の赤司と同じ人物だと思えないとアリスは言った。
洛山と秀徳の試合は洛山の勝利で幕を閉じた。
どちらかが圧倒的だった、という内容ではなかったが赤司と緑間の勝負は圧倒的に赤司が優っていた。
「そういやさ、ムロちんはこの子と知り合いなの?」
今更?と二人の目が大きく開いた。
だが、アリスは試合を見たり他の人から名前を聞いていたから彼の事を知っていただけで、お互いに自己紹介はしていない。
『如月アリスです、よろしくね。』
「へぇ〜、名前も可愛いんだね。アリスちんか。」
ちなみにアリスは妹みたいな存在だとちょっと自慢気に氷室は言った。
「タイガの試合を見に来たのかい?」
『んー。まぁ、半分。』
誠凛に行ってるんだろ?と言う氷室にアリスは色々あるの、と一言で済ませた。
誠凛のみんなの事は当然応援しているが、今日の相手は海常、黄瀬がいるのだ。