第37章 WC Ⅲ
試合は見に行くつもりだが、時間はまだ早い。
「どこかでお茶する?」
『お茶もいいけど、どう?』
アリスは今まで火神と青峰が使っていたゴールへと視線を向けた。
これは彼女からのお誘いだ。
「いいぜ、少し遊んでやるよ。」
『やった!』
全く、と桃井は仕方ないなぁと溜息をつくとまたベンチに腰を下ろす。
普通に考えたら絶望的な身長差があるにも関わらず、ボールを持ったアリスが青峰の前に立つとそれを感じない。
むしろ青峰の方が小柄な彼女の動きに戸惑っている様にも見える。
「おいおい、そんなもんか?」
まだ一本も取れてねぇぞ、と至極楽しそうに言った青峰にアリスは少し悔しそうに笑う。
いくら黒子と一緒にシュート練習したといえど、まだまだアリスのシュート精度は低い。
そもそも小柄な彼女にはダンクは無理だ。
全力でジャンプしてもリングに手は届かない。
それに、真冬の今は出会った時の様な視線誘導も使えない。
『参ったなぁ、やっぱ抜けないよ。』
「当たり前だろーが。」
『…ギュルルルゥ。』
二人の勝負はアリスの腹が鳴って終わりを迎えた。
「なんか食いに行くか?」
『…お腹空いたから抜けなかったんだからね!』
あーはいはい、と青峰は戯れるアリスを遇らう。
そんな二人を桃井は微笑ましくもどこか寂しそうに見ていた。
近くのファーストフードにでも入るか、と話していたがアリスのスマホが鳴り彼女はここで別れることになってしまった。
電話の相手は誠凛バスケ部の一年の友達だったらしく、予定がないなら買い忘れた物を届けて欲しいと頼まれたらしい。
『さつきちゃん、青峰君、またね!』
スマホの画面を見ながら、アリスは急いでスポーツ用品店へと向かって行った。
仕方なく青峰と桃井は二人で食事をする事にした。
頼まれた物を降旗に渡した後、彼等と一緒にいる事はやはりアリスは望まず、一観客として洛山と秀徳の試合を見ることにした。
「あ!誠凛の可愛い子!」
「ん?…あれ、アリスじゃないか。」
お菓子の匂いに引き寄せられたのか、フラっと観客席に顔を出したアリスを先に見つけた紫原は笑みを浮かべ彼女を手招きした。