第36章 WC II
その中には今日、ここで試合をしたチームの選手やその他出場校の選手達も混ざっていた。
そんな人の波を今にも喰いかかりそうな目で見つめる灰崎を見つけたアリスは、静かに彼に近付く。
「海常ならまだ出て来ぇぜ。」
しかし、先に彼に近付く人影に気が付き足を止めた。
『…青峰君。』
思った通り、黄瀬を待ち伏せしていたらしい灰崎はそれを青峰に止められたが収まりがつかなかったらしい。
話だけなら大人しく聴いているつもりだったが、八つ当たりの様に青峰に殴りかかるのを見てしまったアリスは、言葉よりも身体が先に動いてしまっていた。
「やめてほしいならなァ、力尽くでやってみろ!」
「じゃあそうさせてもらうわ。」
青峰のカウンターパンチが見事にヒットするのと同時、灰崎を止めようと飛び込んだアリスの蹴りが決まる。
『っ!』
顔に青峰のパンチを、腹にアリスの蹴りを思い切り食らった灰崎はノックダウン。
「バッ!なんでお前!」
『青峰君こそ!』
伸びてしまった灰崎になど、もう微塵も興味がないとお互いにお互いの事を心配している青峰とアリス。
『全く!あんなパンチして、手怪我したらどうするつもり?』
「おま!そりゃ俺のセリフだ!女の癖にあんな事しやがって!!」
『護身術の一つぐらい心得てるに決まってるでしょ!日本とは比べ物にならないぐらい向こう(ロス)は危ないんだから!』
「だからってなぁ!飛び込んで来るか普通!間違ってお前を殴っちまってたらどうするつもりだったんだよ!」
横たわる灰崎の上で言い争いになってしまう二人。
『そんなマヌケな事するはずないでしょ!』
「あー、もうわかった、めんどくせぇ。」
先に折れたのは青峰で、さっきまでのピリピリした雰囲気から一変いつものヤル気のない彼に戻る。
『…ってかこの人、大丈夫かな。』
「さて、どーすっかなぁこの後。まぁ、なる様になるだろ。」
見つかる前にずらかるぞ、と青峰はアリスの手を取り歩き出した。
自分で蹴りを食らわせた相手だが、その場に転がして放置してしまっていいのか、と彼女の良心がチクリと痛む。
そのせいで、青峰に手を引かれ歩きながらも何度もアリスは振り向いてしまっていた。
「あんな野郎より、黄瀬を心配してやれ。」