第35章 クリスマス
『どうせ無茶するなって言ってもするんでしょ。気休めみたいな物だけどさ。』
付けてたら少しは思い出すきっかけぐらいにはなるでしょ、とアリスは微笑んだ。
桐皇学園学習室。
冬休み中の今は学生寮で生活する生徒達はここで自習する事が多い。
特に受験を間近に控えた三年生には、図書室を兼任しているこの自習室は使い勝手がいい。
名門大学の過去問題集からあらゆる分野の参考書まで一通り揃っている。
しかし、今日はクリスマス。しかも時間は夜7時過ぎ。
自習室の人口は少なかった。
『こんばんは。』
自分達に掛けられた聞き慣れない女子の声に、今吉と諏佐は問題集から視線を上げた。
「っ!?なんでこないなとこにおんねん?」
『なんでって。大きなお坊ちゃんの付き添いで来たついで、ですかね。』
今、まさにウインターカップ二回戦を戦っているだろう誠凛を応援に行かずに何をしてるんだ!と思わず大きな声で言った今吉に少ない自習室の生徒達の殺気立った視線が集中した。
大きなお坊ちゃんとは青峰の事だろうが、この時間ではもうバスケ部の練習は終わっているはず。
「君は確か誠凛の…!」
『如月アリスです。』
思えばちゃんとお話しするのは初めてですね、と裏の無い笑顔で挨拶をした彼女は、座ってもいいですか?と聞いたが返事を待たずに諏佐の隣に腰を下ろした。
私服で来ている生徒も多く、きっと彼女が他校生だとは誰も思ってはいないのだろう。
「ホンマ、わからんなぁ。アリスちゃん何を考えてんねん?」
『これ、青峰君のリクエストで作ったんです。』
はい、と差し出された大きなランチボックス。
中身は色とりどりのサンドウィッチが綺麗に並んでいた。
あれも、これも、と挟む具材のリクエストが多くて結果作りすぎちゃったんで、とアリスは言った。
「それでワシ等に?」
『はい、ご迷惑でなければ。』
受験勉強の休憩にでも食べて下さい、とアリスは言う。
「差し入れは嬉しいが。俺達は君にこんな事をしてもらう仲ではないだろう?」
「そやで。」
『青峰君の食べ残し、ですから。』
後輩の始末は先輩方につけてもらおうかと思いましたが、とアリスは笑った。
「なんや、アリスちゃん。やっぱ青峰とくっついたんか?」