• テキストサイズ

君と僕とが主人公LS

第34章 クリスマスイヴ II


アリスの声が黄瀬の我慢を揺らす。
踵を返して走り出した黄瀬は、そのままの勢いで彼女に抱き着いた。
まるでぴったりおさまる様に神様に作られたかの様に、自分の腕の中にアリスを閉じ込める。


『…涼太?』

「やっぱして貰いたいっス。」


自分の頬を指しながら悪戯に笑った。
青峰に阻止されてしまったが、今度はもう邪魔するものはない。


『仕方ないなぁ。』


アリスはちょっと恥ずかしそうに笑うと、精一杯に背伸びをする。
キスしやすい様にと頬を向けていたが、ゆっくりと目を伏せた事を見た黄瀬はさっと顔の向きを変えた。
重なる唇。
驚いたアリスは目を見開く。
ぼんやり見えた黄瀬の整った顔。
背伸びをしているアリスを支えるかの様に添えられていた手に力が込められ、離さないと言われているかの様。


「…ご馳走さま♡」


そっとアリスを離した黄瀬は、唇をペロリと舐めしたり顔で言うと、そのまま駅へと向かって歩き出す。
そのなんとも官能的でいつもの犬っぽい雰囲気など全くない、男の表情を浮かべていた黄瀬に、アリスはドキっとした。
ポーッと彼の後ろ姿が見えなくなるまで、アリスは動けなかった。
黄瀬の退席でパーティーはお開きの雰囲気になっていた。
アリスが戻ると火神親子も帰ろうとしていた。


「大我、俺達もそろそろ帰るか?」

「あぁ、そうだな。」

『明日も試合だもんね!』


予定は明日の試合スケジュールの後半。
集合も午後だが、この時間に帰ればもう少しアレックスと練習が出来そうだ。


「食べ散らかして帰るみたいで悪いなぁ。」

『気にしないで。おじさまの元気な顔が見れたし、楽しかったから!』


玄関まで見送りに出てくれたアリスに、火神の父親はまた、盛大なハグをした。
アメリカにいた頃は至って当たり前の光景だったのに、何故か今は彼女に抱きついてるのが自分の父親でもいい気分ではない。


「親父、いい加減にしとけよ。」

「大我もして欲しいのか?」


仕方ないなぁ、とほろ酔いの彼はアリスから手を離し火神に抱きつこうとする。
やめろよ、とそれをかわした火神は先に外に逃げる様に出た。
相変わらず仲良しだね、とそんな二人のやり取りを見てアリスは笑った。


『明日、応援に行くからね!』
/ 439ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp