第33章 クリスマス イヴ
『だって!青峰君が優しいからさ。』
自分が急いでいないなら、相手がペースを合わせてくれている証拠だ。
言葉は乱暴でぶっきらぼうで、横暴な態度で近寄り難いオーラを出しているくせに、本当は凄く面倒見が良い兄貴肌。
初対面で2号が懐いたのも今なら理解できる。
『青峰君に30アリスポイント!』
「は?」
『1万アリスポイント溜まったら、なんでも一つだけ、言う事聞いてあげるよ。』
そりゃ先が長ぇな、と青峰は笑った。
「そのポイント、俺も貰えるんスか?」
「黄瀬!」『涼太!』
こんばんは!と黄瀬がアリスのアパートの前で手を振っていた。
『どうしたの?』
「酷いっスよアリスっち!俺の試合の事は全く気にもしてくれてないなんて。」
どうせ勝ったんだろ、と青峰は興味無さそうに言う。
それを聞いた黄瀬は、二人とも酷いっス!と涙目だ。
どうもこの残念なイケメン大型犬にアリスは弱いらしい。ごめん、ごめんと黄瀬を宥める。
「ほっぺにチュウしてくれたら許すっス。」
「黄瀬ぇ!」
青峰の威嚇する様な低い声。
全く、仲が良いのか悪いのか。
アリスはまぁまぁ、と二人を宥める。
『そうだ!今からパパとパーティなの。涼太も一緒にどう?』
折角来てくれたんだし!と笑顔で言ったアリスに黄瀬は大喜びをする。
『青峰君も!まだご両親不在でしょ?』
ちゃんとご飯食べなきゃダメなんだからね、と言うアリスに「どこのかーちゃんだよ」と青峰は笑った。
カーテン越しにもわかる暖かい明かりがつくアリスのアパート。
きっと克哉が張り切ってパーティの用意をしているのだろう。
「Welcome back! My beloved angel♡」
(おかえり!愛するアリス♡)
玄関ドアを開けたアリスは飛び出して来た背の高いどこか見覚えのあるような中年男性に思い切り抱きつかれていた。
彼女の後ろにいた二人は、自分達は入っていいのか戸惑う。
力強いハグに頬に降り注ぐキス。されているアリスは嫌がっている様子はない。
『Long time no see! When did you come to Japan?』
(お久しぶりです!いつ、日本に来たの?)