第33章 クリスマス イヴ
黒子を中継したアリスは、あっさりとレイアップシュートを決める。
『やったー!』
「やっと青峰君から一本取れました!」
ハイタッチしてはしゃぐ二人に、青峰は悔しそうな、けれどどこか嬉しそうな顔をしていた。
今日はここまでにしましょう、と黒子が言い出しそれぞれが帰り支度を始める。
今夜は2号は黒子が連れて帰ると言い、ボールと一緒に彼のスポーツバッグに入った。
「ほらよ。」
『持てって?』
ぶっきらぼうに差し出された青峰のダウン。
「バカちげーよ。そのまんまじゃお前寒ぃだろ。」
軽い気持ちで出て来てしまい、汗をしっかりかいている今の状態では確かにパーカーだけでは少し寒い。
それに汗がどんどん冷えて、更に寒くなっていくだろう。
『ありがとう、でも青峰君が寒いんじゃないの?』
「別に。俺は汗かくほどやってねぇし。」
お前等相手は余裕過ぎだぜ、と笑う。
借りた青峰のダウンは、彼にはピッタリだがアリスには袖は長いし丈も長い、ロングコートみたいだ。
長過ぎる袖を気にしている姿は、なんとも愛らしい。
「青峰君、これを狙っていたんですか。」
「いや、これは…。」
アリスの無意識の行動に、青峰と黒子は頬を染めて見つめてしまう。
彼シャツならぬ、彼ダウン。
それが自分の物ではないにしろ、その破壊力は噂以上のものだ。
「なんつーか、あれだな。取り敢えず、この事は俺達だけの秘密だな。」
「そうですね。」
真顔で二人は頷きあった。
明日も試合があると言う黒子をこれ以上遅くするわけにもいかず、駅まで一緒に来たが送って行くと言った黒子にそのまま帰るようにアリスは言った。
『大丈夫だよ、青峰君がいるし。』
夜道を歩かせる事を気にしてくれるのは嬉しいが、途中までは青峰が一緒だから、とアリスは言った。
「だから心配なんです。」
『なんで?』
「なんもしねーよ、だからお前は帰れ。」
青峰にも言われてしまい、渋々黒子は一人で電車に乗った。
じゃあ俺達も帰るか、と歩き出す青峰をアリスは追いかける。
そもそも歩幅が違い過ぎて、ちゃんと付いていこうとしないとすぐに置いていかれてしまう。
しかし、今は不思議とその焦燥感がない。
『うふふ。』
「なんだよ気持ちワリィ笑い方しやがって。」