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君と僕とが主人公LS

第32章 WC


その証拠が今のブザービーターだったとでも言いたいのだろう。
ラスト10分が始まる。
点差は10点。
その点差はなかなか縮まらない。
今まで以上に青峰の調子は上がっている。


『…青峰君が笑ってる。』


コートに立っているわけでもないのに伝わってくる青峰の変化は、今吉のそれではない。
ピリピリと心地よくも不快な痺れの様な感覚。
3点差、ラスト5分。


『凄い、青峰君ってここまでやるんだ…。』


一旦は縮まった点差は青峰の本気でまたどんどんと開いていく。
火神がなんとか止めようと彼にしがみついている。


『タイガ!!』


圧倒的だった青峰の手からボールが逃げた。


『…っぅ!』


ポロポロと涙が出て来る。
こんな所で泣いてしまうわけにはいかないとグッと口を手で押さえた。
声はそれでなんとか誤魔化せても、溢れ出す涙は止まらない。
観客も互いのチームメイト達も、火神と青峰の動きについていけていない。
けれど二人ともとても楽しそうにプレイしている。
残り40秒、3点差まで差が縮まった。
けれどカウントダウンは止まらず、青峰に追加点を入れられた。
観客席から誠凛を応援する声が聞こえる。
ラスト5秒、一点差。
誠凜が勝つ為のシナリオはフリースローの失敗からのリバウンド勝負しかない。
会場全ての視線が木吉に集まる。


『黒子君!』


青峰のカットしたボールを追うのは黒子。
彼のイグナイトパスが再び火神の手にボールを運んだ。


「タイムアップ!」


主審の笛の音と一緒に湧き上がる歓喜の声と観客席から送られる賞賛の拍手。
火神に支えられて立っている黒子のこぶしと青峰がこぶしを合わせた。
敵同士だったはずなのに。
白熱の試合が終わり、観客達も興奮冷めやらないまま会場を出て行く。
各々の控え室へと戻った両校の選手達。
観客席で試合を見ていた他校の生徒達も会場を後にする。


『…見つけた。』

「んだよ、笑いに来たのか?」


人気のない場所を見つけるの上手だね、とアリスは笑った。
沈んでいく太陽をゴロっと寝転がって眺めていた青峰の視界は夕日より眩しいもので埋まってしまう。


『私、そんなに嫌な奴じゃないよ?』

「…で、なんだよそれ。」


前に回り込んだアリスは両手を大きく広げて、何かを催促している。
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