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君と僕とが主人公LS

第32章 WC


アリスも静かに会場を離れた。


『黒子君、お疲れ様。』


一人、ぼんやりと風景を眺めている黒子を見つけたアリスは声をかけた。


「アリスさん。」


振り返った黒子にジャージが投げられ、火神もそこに立っていた。


「身体、冷えるぞ。」

『あれ?私には?』


お前は平気だろ、と火神は笑った。


「火神君、アリスさん。バスケは好きですか?」


渡されたジャージに腕を通しながら言った黒子の言葉に二人は顔を見合わせた。
何を今更言っているんだと、そんな事は聞かなくてもわかるだろうにと不思議そうな顔をした。


「見たいんです、もう一度。青峰君が笑ってプレイするところ。」

『そうだね、私も見てみたい。』

「だったらやる事は決まってんだろ。」


戻るぞ、と先に歩き出した火神の後を何か吹っ切れた様な顔で黒子が追いかけて行く。


「それに!僕はアリスさんが笑ってプレイする所も見てみたい!」

『え?』


それもこの試合に勝ったら出来る気がするんです、と振り返った黒子は言った。
二人が戻った後、黒子が眺めていた先へアリスも視線を向けた。


『もう十分、私はみんなから助けられてるのになぁ…。』


冷たい風にアリスの呟きは連れ去られて行ってしまった。
後半が始まると、桐皇有利は益々大きくなりどんどんと点差が開いてきている。
今吉により黒子は上手く動けていない、青峰はどんどん調子を上げている。
それに黒子のミスディレクションの効果が完全に消えている。


『やる気なんだ。』


会場の歓声が一段と大きくなった。
桐皇の選手達が呆気にとられている。
ミスディレクションオーバーフローの効果が効いている。


『本気なんだね、黒子君。』


この技が初めて成功した時、例えその試合では効果的だったとしても、その後何度も何度も使えるものではない事も分かった。
どんどん点差を縮めていくが、第3クオーターは今吉のスリーポイントで終わった。
一旦ベンチへと戻っていく今吉と、一瞬目が合った様な気がしてアリスの背中にゾクリと冷や汗が流れた。


『な、なに…。』


声など聞こえるはずがないのに、今吉の口の動きがなぜかズームアップする様に見えてその声も聞こえた気がした。


「勝つのはウチらや。」
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