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君と僕とが主人公LS

第32章 WC


ほぼ満席の観客席。
両校のメンバーが整列して向かい合う。
試合開始のブザーが鳴り、日向と今吉が握手を交わした。
座ってゆっくり観戦するなんて気にはなれず、コート全体を見下ろせる最上階にアリスは立っていた。
ジャンプボールからオフェンスに回ったのは誠凛だったが、スティールからあっさりと攻守交代。
桐皇に、青峰のアリウープで先制点を取られてしまった。
しかし、すぐに黒子の改良型イグナイトパスは青峰のカットを弾き飛ばし、ゴール下の木吉に通ったボールは火神の手へ。
そしてすぐに取られた分を取り返した。
ワンプレイ、ワンプレイ、瞬きすら惜しいと感じる激しいやり取り。


『…みんな、凄い。』


けれどチーム全体を見てしまうと桐皇が押している感じがする。
先にタイムアップを取ったのは誠凛だった。
リスタート後は日向と櫻井スリーポイントの打ち合い。
第1クオーターは同点で終えた。
黒子のバニシングドライブも効いている。
けれど、やっぱり桐皇が押している事には変わらない。


『…さつきちゃん。』


桐皇のベンチに座る彼女が有利に試合は進んでいるのに悲しそうな顔をしている事に気が付きアリスは、胸が締め付けられる様な思いになっていた。
その間にバニシングドライブは青峰に破られ、改良型イグナイトパスまでも止められ、そのまま圧倒的な青峰のスーパープレイで点差を広げられてしまう。


『…黒子君。』


タオルを頭から被って震えている後ろ姿。
どうして楽しいはずのバスケを、こんなにみんな苦しそうにプレイしているのだろう。
過去に何があったのかなんて知らない。
大好きな彼等を、彼等の大好きなはずのバスケを通じて苦しめる様な過去なんて知りたいとも思わない。
けれど、それはそのまま自分にも返ってくる。
きっと彼等もバスケが大好きだから、この先もずっとバスケを好きでいる為に苦しんでいる。


『…辛いね、こんなの。』


黒子がベンチに下がり、火神の動きが変わる。
けれど、それが青峰を煽ってしまっている。
青峰と火神のプレイは互角に見えるが、アリスには不安が込み上げるだけだった。


『…タイガ。』


今の火神の動きは昔、当たり前に目の前にしていたものだ。
一ヶ月のロス修行は効果覿面だったらしい。
前半は桐皇2点リードで終わった。
選手達は一旦控え室へと下がっていく。
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