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君と僕とが主人公LS

第30章 12月 II


小さく溜息をついたアリスは、仕方がないとまた、それを耳に当てた。


「……たい。」


タイミングがよくなかった。
何か言い終えた青峰の声が聞こえる。


『え?』

「お前に会いたい。」


その声に胸が急に苦しくなった。
いつもの横暴な、乱暴な、独裁君主の様な青峰とは違い酷く弱々しい、何かに傷付いているかの様な声。


『どこに行けばいい?』

「俺んち。」

『じゃあ少しだけお邪魔するね。』


電話を切ったアリスは、そのまま桃井に電話をする。


「ありがとうアリスちゃん、それじゃ今から…。」

『あ!その事なんだけど。』


実は今から会う約束をしている事を桃井に伝えたアリスは、申し訳なさそうに今からだけは青峰を自分に貸して欲しいと言った。


「わかった、今吉先輩には私から伝えておくから大ちゃんの事お願いね。」

『うん、説得してみるね。』


スマホをカバンにしまい、デパート地下一階に向かう。
菓子から惣菜のテナントが並ぶそのフロアの中から青峰が好きそうな物を探す。
手土産なら菓子類がいいかと思ったが、可愛らしくデコレーションされたケーキと青峰は似合わない。
しかし、お惣菜を買って行くのはおかしい、どうしようか迷った挙句、その中間にとパン屋に向かった。
自分が気に入った種類を一つずつしか乗せていないのに、レジカウンターに持って行ったトレーには山盛りのパン。


「ありがとうございました。」


店員もその量から自宅用だとは思わなかったのだろう。見た目の良い箱に綺麗に並べて詰めてくれた。
青峰の家は駅から自宅へ向かう途中。
初めて来た時は出迎えに出てくれていたが、今日はそれはない。
インターホンを押すが返事はなく、もう一度押してみようかと考えているとスマホが震えた。
「開いてるから上がって来い」と青峰からのメッセージが光る。


『お邪魔します。』


遠慮がちにドアを開け、一応挨拶をするが静まり返った玄関に虚しく響くだけだった。
室内にも人の気配はなく、留守の家に上がり込むみたいな罪悪感にも似た感覚を抱く。
そんな事する必要は全くないのに、足音すらあまり立たない様に静かに階段を登り青峰の部屋の前に立った。


『青峰君、入るよ?』


トントンとノックをさしたが返事はなく、そっとドアを開ける。
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