• テキストサイズ

君と僕とが主人公LS

第30章 12月 II


冬休みまであとニ日、ウインターカップ開幕までもあとニ日。
朝からどんより重く暗い雲に空は覆われており、天気予報は午後から雪が降ると伝えていた。
学校帰りに大好きなみんなにクリスマスプレゼントを用意しようと駅前のデパートを歩いていたアリスのスマホが鳴った。


「どうしようアリスちゃん、大ちゃんが見つからないの!」


泣き声混じりでかけてきた桃井は、ウインターカップ前の大事なこの時期にも関わらず、青峰は練習をサボっていて居場所もわからないし、電話にも出てくれないと言った。
今吉にそれを伝えたらアリスに相談してみたらと言われ、かけてきたと話す。


『私がかけても出てくれるかわからないけど。練習に出る様に伝えればいいの?』

「うん!お願い出来る?」


ぐすん、ぐすんと泣き声のままの桃井に、アリスの胸は締め付けられる。
全く仕方のない人だと思いながらも、ここまで周りの人達に頼られ気にされている青峰が羨ましくも思える。
デパート内の休憩スペースに移動したアリスは、青峰の携帯を呼ぶ。
いち、に、さん…呼び出している音を数えて、20までいっても出なければ切ってしまおうと決める。15、16、17…。


「…もしもし。」


少し掠れた低い声。
これはどこかで寝てたな、とわかるその声にアリスは思わず笑ってしまう。


『おはよう、青峰君。』

「あー、アリス?」

『うん、久しぶり。』


なんとなく、避けられているのかもしれないと思っていたアリスは、ちゃんと電話に出てくれた事に安心していた。


「…なんか用か?」

『さつきちゃんが心配してるよ。』

「んだよそれ、わざわざそんな事で起こすなよ、ダリィ…。」


寝惚けた顔で大きく伸びをしているか、耳を指で掻いているか、どちらにしてもあまりいい顔はしていなそうだな、と安易に想像できる。


『さつきちゃん泣いてたよ。ちゃんと連絡してあげなきゃ。』

「やだよ、面倒くせぇ。」

『…もう、どうしたら連絡してくれる?』


青峰からの返事を待つ。
しかし、相当面倒くさがっているのか向こうも黙ったまま。
こうなってしまうとお互いに相手が話し出すまで待とうと沈黙が続く。
一度耳からスマホを離し画面を見れば、通話経過時間のカウントアップだけが虚しく続いている。
/ 439ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp