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君と僕とが主人公LS

第27章 11月 II


『This thing is normal. You said you want me to kiss you.』
(このぐらい普通の事なんですよ。それにキスして欲しいって言いましたよね。)


今吉の耳元でそう囁いたアリスは、ニコッと笑いおもむろに彼に口付けた。


「おいっ!」


離れろよ、と火神の伸ばした手をアリスが払う。


『っん!これで理解出来ました?』


ゆっくりと唇を離したアリスは勝ち誇った顔。
はぁ〜と、火神は溜息をつく。


「ったく、お前。そう言う所もアレックスと同じだな。」

「ハハハ!ホンマ、かなわんなぁ!」


突然笑い出した今吉は、何がおかしなスイッチでも入ってしまったかのよう。


「青峰でもこりゃ、難儀するわなぁ。それに、ワシも欲しゅうなってもーたわ。」

『何がです?』


ケラケラとまだ笑っている今吉の目にはうっすら涙が浮かぶ。


『今吉さん?』

「ホンマ、怖いわぁ。」


そう言うと大きく深呼吸をして自分を落ち着かせる。


「火神となんでもないっちゅう事は今のでよぅ分かったわ!でもなぁ、アリスちゃん。ワシも本気やで、覚悟しときぃ。」


今吉はそう言うとほな、と席を立つ。


『なんだったんだろ?』


後姿が見えなくなってアリスはボソっと呟いた。
どうやらまだ、今吉の残した言葉の意味がわかっていないらしい。


「お前なぁ。…まぁ、そうだよな。」

『だから何なの?』

「みんなお前の事が大好きなんだよ、たぶんな。」


そうなの?とどこか他人事のように言うアリスは「大好き」の意味をきっとわかってはいない。
自分に向けられる沢山の好意が、likeなのかloveなのかその根本のところが全く分かっていないのだろう。
もし今ここで、アリスを独り占めしたいから一緒にアメリカに行こうと言ったら彼女は気が付いてくれるのだろうか、と火神はじっとアリスを見つめる。


『…タイガ?』

「いや、やっぱいいや。」


もう部屋に戻って寝る、と火神は先にその場を離れた。
残されたアリスは、ソファーに座りなおすとだらし無く両手足を伸ばす。


『…わかってるよ、本当は。でもわかっちゃったら決めなきゃいけないじゃん。』


アリスの声は誰にも届かなかった。
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