第27章 11月 II
夢を見ていた。
彼がまだ優しい彼だった頃の楽しい思い出を繋いだ夢。
目を覚ましたアリスは、自分が泣いている事に驚いた。
『I still love you……。』
(私はまだ貴方を愛しています…)
呟いた自分の言葉はストンと胸の中に落ちた。
わかっていた事だ。
結局、まだ自分は過去に囚われたままなのだ。
「アリスちゃん、起きてる?」
『あ、はい!』
ノックと同時にカントクの声がして、アリスは慌てて涙を拭った。
「帰る前に、朝風呂行かない?」
『はい!』
昨日は誰かも知らない他人と一緒に入る事に抵抗があり、結局は温泉に入れなかったアリスは、カントクの誘いに大喜びで頷いた。
この時間なら貸切状態ね、と彼女も嬉しそう。
バスタオルとお風呂セットを手に、浴場へと向かう。
思った通り、入っている他の客はおらず二人の貸切状態。
アリスは初めての温泉に大喜び。
『リコさん、誘ってくれてありがとうございました。』
「いいのよ、また来ましょう!」
その時もみんな一緒にね、と笑った。