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君と僕とが主人公LS

第24章 10月 Ⅲ


彼女の家のリビングで雑魚寝状態だった体はガチガチで、青峰は腕や肩を回してストレッチをする。
昔はよく、合宿だとこんな風に寝る事もあった。


「んだよ、人の傷口広げて楽しいか?」

「はい、ちょっとだけ。」


青峰君でもそんな事があるんですね、と黒子は笑った。
昔からバスケばかりで自分がモテる事にもあまり気が付いていない様子はあった。
桃井という可愛い幼馴染をずっと身近に見ているせいもあってか、言い寄ってくる女子には対して興味を持たない。
そんな彼が初めて自分から興味を示したのがアリス。


「でも、ま。さっきのでちょっとヤル気でたわ。」

「そうですね。でもそれなら青峰君だけが有利なわけじゃないです。」


アリスの恋愛観は少しズレているらしい。


「なぁ、テツ。」

「なんですか?」

「俺にお前に火神に黄瀬。なんでだろうな。みんな同じもんが欲しくてたまらねぇんだ。」

「最近、僕はみんなのそれとはちょっと違うと感じてます。アリスさんの事は好きです。いつも笑っていてほしい。けど、その笑顔は僕に向いていなくてもいいんです。」


何があったのかは知らないが、一度は自分から捨ててしまったバスケをまた始めようとアリスは向き直って来ている。
それは自分だけではなく、火神や黄瀬、青峰の影響も大きいはず。


「テツ、お前…。」

「僕にとってはアリスさんもかけがえのない光なんです。」


だから彼女が笑ってくれているなら、それが誰の隣だろうと構わない。


「ところで青峰君、料理は出来ますか?」

「は?」


唐突に変わる話についていけない、と青峰は笑った。
時計の針はもうすぐ7時。
そろそろアリスと2号も帰ってくるだろう。


「たまには僕達でご飯を作ろうかと思ったんですが…。」


シュンと俯く黒子と気まずそうに視線を泳がせる青峰。
テーブルには元の食材が何だったのかもわからない暗黒物質が置かれていた。
玄関ドアを開けた時から、妙に煙い様な匂いはしていた。
しかし、暗黒物質を作っていたとは思わなかった。
アリスは暗黒物質のカケラを掴むと口に入れた。


『んむ!んっ!』


カリカリの食感と口いっぱいに広がる苦味と強烈な塩分の攻撃。
それでも吐き出さずにゴクンとそれを飲み込んだ。
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